翻訳: 2010年5月アーカイブ

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世の中には、市町村の国民健康保険とは別に「国民健康保険組合」なるものも存在する。
少し前に建設国保が無資格加入とかで新聞沙汰になっていたが、言わば既得権益の一つだ。
何がありがたいのかと言うと、ずばり保険料が安い。
フリーランスの翻訳者が加入できる組合はないかと思っていたのだが、さにあらず。
・東京の「文芸美術国民健康保険組合 (文美国保)
・大阪の「大阪文化芸能国民健康保険組合(芸国)」(ホームページなし)
この二つにはフリーランスの翻訳者が加入し得るのだ。
但し誰でもというわけにはいかない。
東京の場合は組合加盟団体の会員であること。
翻訳者の場合、日本文芸家協会経由となるだろう。この時点で訳著(共著は不可)が必要なので敷居は高い。
大阪の場合は、個人が対象で、住所に制約があり紹介者も必要である。
私は文芸関係の訳著として名前が出せている本がないので、その時点で文美は無理だ。
(詩集を翻訳したことはあるが、出版されたかどうかの話は聞いていない)
ところが芸国は紹介者というのが加入の肝で、必ずしも同業者でなくともよいという。
芸国の対象職種一覧をtwitpicに上げてくれた人がいたので目を通してみると、他分野ならどうにか知り合いがいた。
知り合いと言ってもtwitter上の交流しかないわけだが、不躾にもお一人に紹介をお願いしてみる。
後で思うとあまりに非常識なアプローチだったが、その方は困惑しながらも承諾してくださった。
何たる僥倖!芸国の事務局から加入届がもらえることに。
必要書類は加入届一式の中で指定されているものが簡単に揃えられた。
保険証は初回保険料と引き換えとのことなので、後は保険料通知の電話を待つ。
家族は職業不問で一人3000円とのこと、出費が抑えられることは間違いない。

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昼前にゲーム翻訳の案件が来た。
いつもと違うのは、ゲーム内の文字列ではないこと。
取扱説明書らしいのだが、前置きが長すぎてちとつらい。
普通、日本のゲームだったらストーリーに何頁も割かないのではと思う。
これでは文芸分野だ。
#そこの会社には工業分野で登録されている
元から知っている物語が背景なのでどうにか追いつくが、予備知識がなかったら、さぞや辛かろう。
漢文だらけ、固有名詞だらけで、しかも固有名詞が一般名詞とだいぶ紛らわしいのだ。
夕食後にどうにか作業が進み出したと思っていたら、時速換算1頁。
朝刊経済面が時速2~3頁であることを考えると、かなり手こずっている。
しかも報酬は朝刊の7割...経済的にはあまりおいしくない。
報酬と難易度に相関がない悲しさ。
結局こちらには引き受けるか断るかしか選択肢がない。
ま、内容が面白いのでよしとするか。

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ついったーの話題。
字幕翻訳をしている人が、登録してから5年も経つ会社に声を掛けられた。
・露骨に学生の尻ぬぐいと言っている
・大量で短納期
・他社での通常料金を提示したら渋られる
という、見るだに黒い案件。
しかしその引き合いの時点で、彼女は引き受けようか少しだけ迷っていたらしい。
「皆さんならどうしますか」と呼びかけがあった。
私はすぐさま反応して「私なら断ります」と書き込んだのだが、他の人はどう考えるのか気になった。
すると、続く2~3人も同様の反応。
「翻訳の相場を破壊したくないので断ります」との書き込みを見て安心。
願わくばそういう人が多くいてほしい。
決して不当に高い料金をむしり取れというのではないし、そんなことはこのご時世ほぼ無理だ。
ただ、せめて、不当に安い料金で翻訳を提供しないでほしいと願うのみ。
・安くて低品質→客先が品質に期待してくれなくなる
・安くて高品質→相場が崩壊する
正直なところ、品質に期待しなくてよいのであれば日本人が和訳をする必要もないと思っている。
そうなると、特に中国語の場合、翻訳料金は簡単に倍以上も安くなる。
日本人として自然に感じる文章という品質の提供が、日本人翻訳者の価値であるはず。
分かればいい、という程度なら今日び自動翻訳でも結構いけるのだ。
なので、私が恐れているのは「分かればいい」水準を求める客先が増えていくことだ。
何だか自分が古くて狭量な人間のように感じてしまうが、否定はできない。
結局、件の彼女は再打診を受けたときに断ったという。拍手。


夜になって、違う方面からまた気になる「つぶやき」が入ってきた。
日本語が絡む翻訳は日本人にしか発注しないよう規制を望み、働きかける人がいるという。
それはいくらなんでもおかしい。
和訳ならまだしも、外国語訳を日本人がするべき理由は特にないはずだ。
しかも競争で仕事を勝ち取るならまだしも、競争を自ら阻害するという発想が信じがたい。
本質的に国際業務であるはずの翻訳で食う人間が鎖国してどうするの。

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連休前に引き受けた翻訳の原稿には「速記原稿」とあった。
講演会の全発言を書き起こしたものらしい。
中国語は話し言葉と書き言葉がそれほど違わないのだが、今回はひどかった。
・句点から句点までの間が一文とは思えない長さ
・話が何度も重複する
・構文を素直に訳すと文意が逆になり、前後とつながらない
・固有名詞がどう見ても怪しい
発言者が言い間違えた(または音声としては普通に聞こえた)のか、速記がおかしかったのか。
私の理解が追いついていない可能性も残念ながら否定できない。
それにしても、日本人が講演した内容だったら元原稿を見た方が早いのではと思う。
「答案」が手元にある状態で私の訳文を見たら、お客さんはどう思うだろうか。
訳が間違っていると責めてくるだろうか。
思いがけず、文字しかないことのつらさを感じた。
せめて講演録の音声があれば、どこで話が切れているのか、どういう語調だったのか、判断材料が増えたものを。

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