文旦

物心ついた頃から柑橘類が好きではあるが、特に好きなものというと近年では文旦である。
ありがたいことに近所の商店街で美味しいものが手軽に買えるため、早春には三日にあげず食べている。
ところがこの文旦、何故か知っている人が少ないということに気づいた。
同郷の友人もさることながら、中国の知り合いにも「それ何?」と聞かれ困ったことがある。
そもそも私が文旦を気に入ったきっかけは中国留学だったので、向こうでは普通に売られているものだと思っていたからだ。
文旦は文旦であって、上位概念など思いつかなかったのだが、中国語(の文化)で言えば「柚子」の一種らしい。
そう言えば年明けに台北で食べた文旦の名前は「西施柚」だった。
#「西柚」だとグレープフルーツになってしまうのが紛らわしい
中国でも「桂林柚」だったり「水晶柚」だったりして統一名称があるのかないのか分からない。
一種類の果物に複数の商標のようなものが付いているような気がするのだが、検証する術はない。
何しろ売っている人々すら気にしていないのだ。
対面販売で買うにしても「それちょうだい」と言えば済んでしまうので商品名は要らないと言えないこともない。
ただ、「文旦ちょうだい」と言えばたいてい期待通りのそれを売ってくれるので、「文旦」で間違いではないのだろうとは思う。
香港で見かけたときには「泰柚」と「Pomelo」が併記されていた。
流石にポメロではないような……
私が好きな果物は一体何なのだろう。改めて表現しようとすると詰まるのであった。

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