さらば愛しき天使

愛しい愛しい天使が斯界から飛び去ってしまった。

せめて事故で頓死だったら私も楽だったが、闘病の末。
深部呼吸器炎。
声を失い、鳥の姿を失い、逝ってしまった。
関西随一の名医に手を尽していただいたが及ばず。
「若い子なら耐えられるはずですが……」
老いを見せることはなかったが、もう17歳なのだった。

入院の前からBlueskyも全く見ていない。
耳に入る野鳥の声さえ切なくて涙腺が緩む。
すれ違う赤子の泣き声に強い動悸がした。

今は最期の可哀想な姿ばかり目に浮かんで仕方ない。
17年以上も共に過ごした楽しい記憶が出てこない。
彼を迎え入れた翌々月、私は会社勤めを辞めた。
つまり自由業の暮らしをずっと見守ってくれていた。
日に4回の放鳥は完全に日課となっていた。

別れそのものは致し方ないし覚悟もあるはずだった。

はずだった。

葬儀場へと見送ったあと、遺品を処分した。
封を切ったばかりのバードフードから温室まで。
日の差し込む窓際にも、ぽっかり穴が空いた。

可愛がってくださった皆さま、ありがとうございました。

気づけば20年

フリーランスとして最初の仕事をもらって早20年。
厳密には覚えていないが確か3月だった。
相手先の会社と担当者の名前は覚えている。

AI時代になくなる仕事の筆頭らしいが、今のところ生きている。
我ながら情けない売上の年もあったが、赤字にはなっていない。
こうして生き延びる術そのものに価値があるかと思ったほどだ。
が、むしろその価値に買い手はつかずFPは開店休業が続いている。

変わったことと言えば主に通信環境だろうか。
・メールがPOPメーラーからGmailに移行
・スマートフォン登場により随時メール確認可能に
PCは何度か買い換えているがソフトウェア環境に大きな違いはない。
取引先に指定されライセンス供与を受けているものが増えた程度。

所謂コロナ禍で実務案件は減った。
これから人の往来が回復するとまた状況は変わるかもしれない。
大陸で締結することになっている契約書も多い。
文化面の民間交流とやらがどうなるかはまったく読めていない。
自分以前に、日本の存在意義がかつてほどあるだろうか。

開業当時は分かっていなかったが、政治の影響は大きい。
人様に愚痴ってもおわかりいただけることはまずないが。
複数の面で、自分は少数派であり続けるような気がする。
こんなやつが一匹ぐらいいても世界は回るだろう。

こんな日が来るとは

大陸の翻訳会社のほうが高単価で求人を出している。

取引実績のある国内のどこよりも高い。
目にした案件の募集分野に限れば相場の倍額だ。
(そもそも分野を限った求人自体あまりないが)

昔は「大陸(の人)なら安く使える」と聞いていた。
翻訳会社の経営者の講演でも、だ。
必要な生活費が少なくてすむから云々。
それが遂に逆転したということか。

気になるのは、和訳だということ。
つまり最終読者、消費者は日本人のはずだ。
下請け料金が高ければ最終製品も高いだろう。
その高い製品を買う原資は期待できるのか?

卑小な話、翻訳料金の支払いは確実なのだろうか。
だとしたら消費税の納税に悩む必要がなくなる。
そもそも国際取引に消費税は課税されない。

複雑な気分で手を拱いている。