8時までに

午後4時ごろ、翻訳依頼のメールが来ていた。
いつもなら30分おきにはメールチェックしているが今日は珍しく会社仕事で忙しかったので確認は5時半に。
文面には「8時までに返答を」とあった。
気を使ってもらっているようで申し訳ない。
そそくさと受諾の返事を出す。
内容が送付状のようなもので、量も2枚。
最初からWordファイルだったので事務作業もいらない。
帰宅してすぐ、ちょこっと覗いたつもりが気づいたら終わっていたというあっけなさだった。
納品して顔を上げると、7時50分。
……。

立つ瀬がない

勤務先の応接室にて。
顧客データの取り扱いには神経を使うね、などと事業環境の話をしていると。
取引先「特に御社、アルバイトさんとか多いでしょ」
……言えない。私もその一人ですなんて。
助教授「僕だってアルバイトですよ」
一同「それは違う」
さ、寒い。立つ瀬ない。

H字路

歩いて通勤しているせいか気になることがある。
T字路って実は進行方向が青信号の時より赤信号のほうが安全に渡れてしまったりしないか。
殊に勤務先のすぐそばの交差点(だいたいH字型)の場合、
南北方向の信号機は同期して動いているので、それらが赤であれば東西方向に車はいない。
赤になって最初の数秒は曲がってくるかもしれないが、せいぜいその程度である。
で、何を言いたいのかというと。
矢印方向に渡ろうとする場合、南北方向の信号が青だと左折車が割り込んでくる。
こっちのほうがよほど危険に感じるのはおかしいだろうか?
参考までに、向かって右側は幹線道路である。
向かって左側の道より明らかに流れが速い。

国際化四考

●その一、勤務先のビルにて
お手洗いに席を立ち、ビル共用部へ向かう。
すると前からやって来た白人女性2人。
全く会話が聞き取れない。英語ではなさそうだ。
と、向かう先はお手洗いではないか。
あいにく個室は4箇所とも使用中。
「おぅまいがっ」
2人のどちらかから、ひらがなっぽい呟きが聞こえた。
席に戻り、はす向かいの人に報告。
私「絶対うちの人じゃないと思うんですけど」
相手「迷い込む場所でもないですよね、ここ」
かといって来る者ほぼ拒まずのフロアではある。
以前よそのフロアでエレベータを降りてしまったところ、
エレベータホールと廊下の間にセキュリティ装置があった。
●その二、中華っぽいもの屋にて
メニュー表を見ると、どうも定番以外の中国語があやしい。
「昼飯」が「昼飯」なのはともかくとして、「トマト丸ごとラーメン」は「赤玉麺」ぢゃないと思う。
せめて「赤」を「紅」って書いてくれ。
#「昼飯」は「午餐」が正解のはず
●その三、某スーパーにて(一)
細身の若い女性2人組。
片方は中国語で話しかけてくるのに、相方は日本語で返事している。
中国語「これは私が買うから」と私の後ろへ並びかける。
日本語「イイノ、イッショ」彼女は私の前で会計待ち。
中「払うの別々じゃん」
日「イイカラ、並ブカラ」
なんて日本語な日本語だ、と感心した。
いいから(よこせ)(さもないと)並ぶ(ことになる)から。
ざっと三つの要素を省いている。中国語ネイティブらしくない。
発音こそカタカナだが、立派なものだ。
●その三、某スーパーにて(二)
私の2人前にいた人も、どうやら日本人ではなかったらしい。
見た目ではわからなかったが、会計後お店の人に駆け寄ってきた。
店員「どうしました?レシート?」
男性客「すてき、すてっく」
店員「ステック?…..スティック?」
その店員さんがこれかい、というふうに割り箸を見せると男性客はニヤリとして受け取っていた。
言われてみれば箸はチョップスティックとかいうらしいがよく気づいたものだ、この人。
白人さんなだけで部外者と信じ込む私なんかよりよっぽど国際化できていると見た。

ラウンジデビュー

ラウンジと言っても、夜のお仕事ではない。
うちの地下にビジネスラウンジなる部屋があるのだ。
仕事机が数台と、打ち合わせ机が数台。パソコンが2台とコピー複合機が1台。
ちょっとした事務所である。
自宅部分が閉め切っていたせいか暑いので、空調の効いている共用施設に一時避難した次第。
パソコンと紙資料を持参して、入り口側の卓を占拠した。
意外に人の出入りがあり、いまいち落ち着かない。
夫婦らしき二人連れがメールチェックうんぬんの話をしている。
間仕切りの向こうでは誰かがポリ袋をがさがさ探っている。
静かさでは誰もいない自宅のほうがましなようだ。
平日の晩なのでこんな感じなのだろうか。
退室しようと辺りを見ると、受験生らしき若い子がいた。
場所を変えるだけでも、勉強にはいいのかもしれない。

久々の受注

日中情勢のためか、気まぐれな旅行のせいか
ここしばらく翻訳仕事がなかった。
行く末を案じ始めていたところに携帯メールが。
一番ごひいきにしてくれている会社の担当者からだ。
今年に入って私の都合で断ってばかりだったので心証を悪くしているかもと気にしてはいた相手である。
たいした量ではないし、納期も逼迫していない。
この条件なら大丈夫、と携帯から返信したところ、PC宛にさっそく原稿を送ってくれた。
その文面が泣かせる。
「ぜひお願いしたいなといつも考えています。
 けれど、スケジュール上の問題で、なかなか適当な案件がなかったのです。」
ひ~っ、ごめんなさいごめんなさいっ!
引用元メールの差出人は中国語ネイティブの方である。
#と断らなければ誰も気づくまい、自然な日本語。
複数の意味で感動した。

入館証

勤務先の入館証には顔写真が入っているが、普段は意味を成していない。
ビルの守衛が顔と入館証を見比べることなどないからだ。
フロアに入るのは電子開錠なので、やはり写真はどうでもいい。
それが今日は役に立ってしまった。
徒歩15分ほど離れた本社ビルへ資料を届ける用事ができたのだ。
本社ビルでは受付と守衛の皆さんに顔と入館証を見られる。
入館証をもっていないと、その場で手続きが必要になるらしい。
それはいいのだが。
「おかえりなさい」事務的、いや機械的に迎える声。
訓練したのかというほど揃っている。
社の従業員とはいえよそのビルから来た私には「ただいま」はおかしい。
とりあえず「おつかれさまです」とだけ返事をしておく。