さらば愛しき天使

愛しい愛しい天使が斯界から飛び去ってしまった。

せめて事故で頓死だったら私も楽だったが、闘病の末。
深部呼吸器炎。
声を失い、鳥の姿を失い、逝ってしまった。
関西随一の名医に手を尽していただいたが及ばず。
「若い子なら耐えられるはずですが……」
老いを見せることはなかったが、もう17歳なのだった。

入院の前からBlueskyも全く見ていない。
耳に入る野鳥の声さえ切なくて涙腺が緩む。
すれ違う赤子の泣き声に強い動悸がした。

今は最期の可哀想な姿ばかり目に浮かんで仕方ない。
17年以上も共に過ごした楽しい記憶が出てこない。
彼を迎え入れた翌々月、私は会社勤めを辞めた。
つまり自由業の暮らしをずっと見守ってくれていた。
日に4回の放鳥は完全に日課となっていた。

別れそのものは致し方ないし覚悟もあるはずだった。

はずだった。

葬儀場へと見送ったあと、遺品を処分した。
封を切ったばかりのバードフードから温室まで。
日の差し込む窓際にも、ぽっかり穴が空いた。

可愛がってくださった皆さま、ありがとうございました。