わざわざ東京に出てJTF翻訳環境研究会「IT翻訳の現状と翻訳の未来」に参加したのは、話題がまさに業界の環境を取り巻くものだったからだ。
講師はもとより聴衆もほとんどがIT翻訳の中の人。
翻訳会社から来た人も、フリーランス翻訳者も相当数いたが、基本的利害は共通している模様。
第一部が「IT翻訳の現状」。
IT翻訳の顧客は多国籍企業が多いようで、昨年来の不景気がとても響いているとのことだった。
・翻訳単価の切り下げ
・もはや「翻訳」の手応えがない「作業」
・優秀な人材でも仕事にあぶれる景気
とまあ、印象に残っているのは暗い話題ばかりだ。
出席者からは苦笑やらため息やら声にならないような反応が漏れたりしていた。
第二部は「翻訳の未来」。
・Googleの翻訳関連ツールが革命を起こすのか?
・起きるとしたら影響は?翻訳業界としてのすべきことは?
・日本でも英語を公用語にすべきでは?
といった講師の推測と意見が熱く語られた。
翻訳するということの意義や歴史などについても言及があり、考えさせられる内容ではあった。
その後ややあって懇親会に移ったわけだが、やはり出席者は誰もが「英語の人」。
私だけいまいち利害(蚊帳?)の外にいる感じがやはりぬぐえなかった。
講師じきじきに聴講の動機を尋ねられたほどだ。
……ぃゃだって、要項を見る限り、自分が対象外とは思えなかったのだが。
○翻訳業界の将来に関心のあるすべての方(IT翻訳の予備知識は不要です)
業界の末席を汚している以上、関心は大いにある。
それに、講義内容も英日・日英の翻訳に特化されたものではなかった。
・業界の構造と動向
・仕事の流れ
・翻訳対象の変遷(文脈のある一連の文章→大量の断片)
・最近の翻訳関連ツール
など、いずれも中日翻訳だからといってありえない話ではない。
大幅に違ったのは受注単価ぐらいのものだ。
昔は高かったという話は「歴史」なのでさておき、十分以上に値下がりした英日の単価でも聞くと高く感じる。
懇親会で「だって安かったら家族が養えないでしょ」という声があったが、それはどうなのか。
コスト積算でいくら欲しい、というのは違う気がする。
翻訳者に家族がいようといまいと、客先には何ら関係がない。
まぁそこを主張する、できるのがグローバルな発想とやらかもしれないが。
おお、気軽にコメントできるようになりました。ありがとうございます。
> 十分以上に値下がりした英日の単価でも聞くと高く感じる。
これは予想外でした。英日なんかより他言語のほうが単価は高いとおもっていたのですが、中国だと、今や中国側の翻訳ベンダーとの競争が熾烈なんでしょうか。
私自身は英日という狭い世界しか知らないので、いろいろと勉強になります。今後ともよろしくお願いいたします。
そもそも日本人(→クライアント)が中国を安く見ているのではと勝手に疑っています。
趣味?で派遣社員の求人サイトを見ていると、「英文事務」より「中文事務」のほうが1~2割は安いので。
より希少な能力だとか価値を認めてくれる人がいないような気がしている今日この頃です。