翻訳学習セミナー

中日翻訳のセミナーがあると紹介を受け、得がたい機会なので参加してみた。
とある通信講座のスクーリングという位置づけながら、何故か部外者も聴講可能。
半年の講座を振り返り、ありがちな誤訳を原因から解説という話だったようだ。


原文の理解力
単語の意味/文法構造/文章の趣旨/背景事情
・同じ表現でも文章の趣旨/背景事情によって意味(=訳語)は変わる。
【前提と先入観の誤解に注意】
・文法成分「把」はすぐ目的語を取る構造であることに注意
・「政府官員」は官僚≠公務員。辞書を引くこと。
・外国から来た人≠外国人。中国の国情(背景)による。
・背景に見える表現を訳語として差し込む手法もあり。
→文脈における意味、文章全体の主張に照らしてどう訳すべきか?


訳文の表現力→日本語としていい(→自然な、通りのいい)表現
・原文の漢字を全て訳文に盛り込むと堅い/くどい→言い換え表現は?文全体の意味は?
(ここでも文の成立背景を考慮する)
・漢字に囚われないで日本語を考える
・「彼ら」に女性が含まれる場合もある(文脈による)
・日本語としての語順を優先する(原文を引きずらない)
 数量表現が文頭に来るのは中国語の性質によるもの
→いい訳語は日本語の辞書で引いてみた時しっくりくる
・未経~の訳に「いまだ」は不要


語彙と語感
・新しい単語を見かけた時すぐ連想検索する
・80後は80年代生まれ(90後、もあり)
・「警察」=警察官(人を指す、組織ではない)
・外国/外国語由来の言葉は原語で検索してみる
・固有名詞の扱いに注意。日本の団体には「日本」と添え書きされている場合あり
・『ビジネスマンの英語』村松増美・小松達也
 「記憶力が衰えるのに反比例して判断力は増す」→ゆえに単語ではなくフレーズを覚える


語感の違い
・医者に相談する/医師に相談する
・「いそしむ」には自分を高める意味合いがある(c)金田一春彦


・日本語の見出しは体言止めが多い
・中国語の代名詞、副詞、接続詞、方位詞は誤解を招かない限り削る
「あなた」は訳出しない(→日本語では発しない)ほうが無難


中国人の日本語学習(受講生の体験談)
・体育会系、体で覚える感覚の取り組み→日本人は頭で考える
・使える会話を重視、言葉を口から出す感覚をたたき込む
・教科書を暗唱-暗唱の時間がある-できるまで残らせる
・中1で文字と発音、高2まで文型と会話、高3で天声人語→卒業時に日検1級
・中国人は言語習得に壁がない←多彩な方言が混在する環境
・自動詞と他動詞の扱いを教えるのが困難だった
「誤解が解く(←解ける)」「交流を進みたい(←進めたい)」
・自然な日本語には子音しかない音節もある。「とりあつかい」の「つ」、「かたな」の「か」など。


講義の後は交流会。
紙コップ、缶ビール、おつまみが配られて町内会の集まりのような風情。
古くからと思しき受講生たちが数人ずつ固まって交流を始め、一気に苦手な雰囲気に。
数分後、参加者それぞれが自己紹介するに至って背景が少し読めてきた。
現役のフリーランス翻訳者は私と誘ってくれた人の他一名、しかも英日が専門の定年あがり。
その英日の人も含め、雰囲気がカルチャースクールさながらだったのだ。
そんな中、セミナー主催者である出版社の社長から、ちらっと翻訳出版企画の話が。
自己紹介が一巡するや、そそくさと社長に名刺交換を申し出てみた。
日本人ではないので話が要領を得ないが、第一歩は踏み出せたような気がしている。

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