文字

何でも屋を自認する私は、原稿の内容が分からないという理由で仕事を断ったことがない。
ただし最低限の前提条件として、文字が読めなければならないのだが。
自身もかなりの悪筆ながら、手書き文字が読めなくて断る案件は毎月のようにある。


支給原稿の文字が読みづらい原因は大きく分けて二つ。
そもそもの字が読みづらい場合とファックスやコピーで潰れてしまっている場合がある。
後者は状態のましな部分があればOCRソフトに救われることも多い。
もっぱらの問題は、やはり前者だ。
まれに活字でも飾り文字など目をこするものがあるが、困るのはたいてい手書きの時だ。
たいていは一瞥して判読を諦め、その旨を伝えて断ってしまう。
翻訳会社の担当者も同情気味に諦めてくれることが多い。
全体は活字で一部が手書きの場合は、活字部分だけ訳せと指示変更になることもある。
担当者によってはメールや別ファイルで該当箇所の文字だけを指摘してくれる。


お互い断る権利があるとは言え、思えば何とも贅沢な話だ。
インターネット普及以前の翻訳者はファックスや郵送で原稿を受け取っていたはず。
その原稿が読みづらかったら彼らはどうしていたのだろう。
この仕事を始めたのがそもそも今世紀に入ってからなので、実は半分も想像が付かない。

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