比喩ではない。
実母が左手首を骨折したので帰郷している。
母は完全な右利きのはずだが、左手が使えないと自分でできることは激減する。
無理して整形外科を探し処置を受けたあたりで救援要請のメールを送ってきた。
まず、整形外科の往復に無理がかかっている。
間の悪いことに当地では木曜日に休みの開業医が多い。
かかりつけ医も休みだったため、自分の運転で数件を当たったようだ。
当時は骨折とまで思わなかったそうだが、ハンドルを握るのも患部に響くはず。
シフトレバーやサイドブレーキを引くのは至難の業だったろう。
左手には力が入らず、右手が届くほど大柄でもない。
幸いその日の来客は母の旧友だったので、昼食と夕食を置いていってくれていた。
デザートも果物やらアイスクリームやら貰ったのだが、意外なところで問題が。
左手が指先より出ている添え木に固定されているため、押えることもできないのだ。
柿を剥けないのは分かっていたが、カップアイスの蓋は流石に意外だった。
よしんば外蓋を外せても、内蓋フィルムがはがせない。
(所謂コンビニ弁当が食べられないことを意味する。)
料理どころか食べることさえ想像よりずっと不自由になっていた。
袋は鋏で切れば開けられるが、箱やパックは難しい。
洗濯は(全自動なので)できるが、畳めない。
物の出し入れはできるが、ごみ袋の口を縛って封じることはできない。
……
それでも意外と本人が落ち込んでいなかったのだけは救いだった。
幸いと言うべきか身内に骨折の経験がないので、治療期間の知識が全くない。
腫れが引くまで数日とのことなので、その間の滞在でいいかと甘く見ていたが。
添え木が外せれば完了などというものではなく、それからギプスに約1か月という。
色々と考え直し仕切り直す必要が出て来た。
左手にどれだけの自由度があるのか全く分からない。
ギプスそのものの寸法によっては、手持ちの服が着られなくなってしまう。
動かせないだけでなく、嵩張るという側面も、これからの季節には重い。
・独りで(片手でも)できるだけバランスよく栄養を摂れる食事
・袖ぐりに余裕のある前開きの服
思いつくモノがこのぐらいしかない。
しかも、ここは田舎。徒歩圏に選択肢などない。
最寄りのコンビニまで坂道20分。団地を通るバスは数年前に廃止された。
運転できないと自立した生活はかなり難しい環境なのだ。
こうして書き出して整理してみても、独り暮らしをさせるのは酷に思えてきた。
週末には兄が来てくれるそうなので、交代で荷物を取りに戻るのが上策か。
かかりつけ医の助言に従って介護保険の申請はしてみた。
要支援認定でももらえれば、ヘルパーさんに猫の手を借りることもできる。
とは言え認定まで1か月ほどかかるそうなので、その手前の時期をいかんせましや。