オシャレと慣れとわがままと

民泊なるものを初めて体験した。
バケーションハウスと称する物件なので本当の民家ではない。

台所には冷蔵庫、電子レンジ、IH調理器と食器類がある。
おたまやフライ返しなどもあるが、菜箸はない。
寝室は2つあり、ベッドは合計5台。
浴室とお手洗いは分かれている。
リビングには大きなテーブルとソファ、長椅子がある。
光回線と無線LANも利用でき、仕事に支障はない。

そして建具、家具、備品はどれもしゃれている。
所謂リゾート風というやつだろう。
茶碗はなく北欧系「ライスボウル」があるといった体だ。
無垢材ニスなしのフローリングに真っ白い漆喰の壁。
調度品は白く直線的なデザインのもので統一されている。
クッションやカーテンの濃い青が好対照だ。

IH調理器を補足するためか電気ケトルもある。
が、真っ白い木製カップボードの上に置かれ、電源から遠い。
隣にはポップアップトースターもあるが同時に使えるだろうか。
そう言えば電流容量の説明は聞いていなかった。
給湯はガスのなので所謂オール電化ではないだけに気になる。
勝手口の上にブレーカーがあったので確認すると50Aだった。

調味料の備え付けがないのは民泊としては普通だろう。
とは言え買いすぎて持ち帰るのも抵抗があるので一計を案じた。
ソース焼きそば、スープ餃子ならば調味料が付属している。
普段は利用しない添付調味料も、こういうときは有り難い。
食材も鍋物用セットや豚汁用水煮を探した。
滞在期間が限られているので、使い切れることに価値がある。
調味料や食材を少しずつ調達するには100円ショップが便利。
長居するなら自宅から持ち込むのもありだろう。
ただ道中の荷物を増やすことにはなるが。

自宅も実家もガスコンロなのでIH調理器には慣れない。
対流熱が利用できないので、電気ケトルも活用しよう。
お湯を沸かしてからIH対応鍋に移し、加熱し直す。
最初そこに気づかず失敗した。

不慣れな調理器具は覚悟していたのでまあいい。
存外やられたのは洗面所だった。
木製の台が腰骨ほどの高さで、その上に陶器の洗面器。
真っ白で美しい長楕円なのだが、傾斜がまるでない。
床はリビングと同じフローリング、防水タイルではない。
こぼしてはならぬという緊張に襲われる。
胸の高さでお湯をすくって顔を洗うのは難しいものだ。
より身長の低い人だったらどうするのだろう。

生活感のないオシャレさに敗北したということか。
階段や廊下の幅は戦後の日本家屋によくあるサイズ。
大柄な人は大柄な人で苦労しそうな気がする。

日常を持ち込もうとしすぎているのだろうか。
自覚していたより神経質なところがあるのだろうか。
柔軟に現実的に対応しているつもりなのだが。

 

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