行きつけのパーマ屋さんでは、「最低限度の愛想があること」を採用基準にしているとか。
接客が必要な仕事であるからには無愛想ではいけない、コミュニケーションは大事とのことだった。
「僕たちが作るべきものは商品なんです。作品しか作れない、作りたくない人は山に籠もってアーティストやってりゃいいんですよ」と穏やかな口調でオーナーが語っている。
一方的な押しつけが許されるのは良くも悪くも「作品」に限るが、手に職のある人間はそっちへ走りがちだから意識して「商品」に戻ってこないと……共感できるような、耳に痛いような。
いっぽう、彼の知り合いには美男美女しか採用しないという人もいるという。
「技術はなんぼでも教えてやれるけど、顔は作ってやれないから」だそうで。
客商売だしそれもありかな、とは思うものの、何だか他人事なのに聞いていてやるせない。
セットが完了したお客さんをちゃんと引き立てられるかしら、とか。
若者が万一そう言われて面接で落とされたら立ち直れるのかな、とか。
愛想が優先の彼にしろ、顔が優先の彼にしろ、共通しているのは「技術なら教えてやれる」というところ。
そう言えば昔いた会社でも「実務なら教えてやれる」なんてのたまう先輩がいた。
……となると、新人に求められるのは「素直にきちんと話を聞くこと」が一番なのかもしれない。
簡単なことのようでいて、実際には感情やらしがらみやらがあって意外と難しいし。