某所で冗談半分に言っていた「和服で仕事」を実現した。
まだまだ着装に時間がかかるが、どうにか自力で形になったのでよしとする。
仕事の内容も私には珍しく「日の当たる」文書だった。
最近おなじみになった某社の案件ながら、今回は講演資料。
いつも社内文書や裏方用の説明書ばかり訳しているので、少し晴れがましい気分だった。
翻訳会社を挟んでいることもあり、名前が外に出ることはないはずだが。
自分の訳した文書に読み手がいるのか疑わしいことも多々あるなか、発表される文なのだ。
聴講しようがない講演会なので、実際にどういう形で出されるのかは分からない。
「分かりやすい日本語で」との注文だったので、簡潔にまとめるよう心がけた。
講師の話がつつがなく会場へ届けられますように。
何故か思い出した記憶の断片は、たった一度の通訳ブース。
ただ、自分だけの席があって、自分の名前で仕事ができること自体に感動していた。
舞台袖にいたので聴衆には見えなかったはずだが。
この仕事を志したきっかけの一つではあるのだが、今や通訳をやろうとは思っていない。
それでもたまに思い出す「表舞台」のイメージはあの風景だ。
端から見ればあれでも裏方なのだろうが。
誰の目にも表舞台に立つ人なんてそうたくさんいるものではないし、それでいい。
自分なりの舞台があって、自分なりに立っている。
まずは、それでいい。