最近、翻訳まわりの副業が増えた。
TRADOSのWinAlign機能で対訳をまとめる作業が発注してもらえるようになったのだ。
ある文書の英語版と日本語版を渡され、「整合ファイル」なるものを作って納品する仕事なので
自分が翻訳をすることは全く期待されていない。
英語版のある段落とその訳文である日本語版の該当段落を文字通り紐付けするだけなのだが、
段落の区切りが英日で違っていたりするので英語力不要とはいかない。
場合によっては前後の段落をひとつに併合したり、逆に文を読点で段落に分けてしまったりする。
うかうかしていると原文にはある繰り返しが訳文にはないといった構造に引っかかる。
したがって校正するぐらいの神経を使って対訳に目を通していくのだが、
他人様の仕事を傍観できる機会はそうそうないので意外と面白い。
直訳過ぎるだろうと思ったり、予想外の対応表現が見事にはまっていて感心したり。
本業の中文和訳には出てきそうにない表現もあったりして、暗記すれば役に立つというものではないが
日頃の翻訳作業を反省するなかなかよい機会になってくれたと思う。
たかが「かな」?
Googleニュースで新聞各紙を斜め読みしてふと気づいた。
今をときめく国連事務総長「潘基文」氏の読み仮名が実は複数ある。
私はてっきり「パン・ギムン」で統一されているものだと思っていたのだが
日経では「バン・キムン」になっていたのだ。
気になって「潘基文」で検索してみると、外務省では「パン・ギムン」、JICAでは「バン・ギムン」
そもそも外国語の発音をカタカナで書き取ろうということに無理があるのかもしれないが
人名の読みを検索するときは下位結果まで見て最多のパターンを探さないと、という教訓になった。
幸い中国の人名は漢字表記のまま読み仮名なしで通用することが多いものの、
ごくまれに読み仮名を依頼されることがある。
例えば「胡錦濤」主席はたいてい「フー・チンタオ」なのだが「錦」は「ジン」ではないかと迷うときもある。
しかし、なまじ漢字表記のまま通用してしまっているがゆえに、それどころではなく
実用上「こきんとう」になっている場合が多いのではないだろうか。
滅多に見ないテレビのニュースでは「こきんとう」だった気がする……
短い方が難しい
全部で71語というトホホな分量の追加発注をもらった。#流石に単独だったら拒絶したと思う
どうもホームページの見出し文字列らしい。
全体の文脈がないので訳語を探すこと自体が骨だったが、
何より大変だったのは”Book Now”と”Reservation”の訳し分け。
これが英語のテストなら両方とも「予約」で正解もしくは「今すぐ予約」と「予約」だが、
意味の同じ語句を書き分けている意図を考えねばならない。
支給された「原文」はWordにべた打ちだったので配置も色も分からなかったが、
客先の名前から該当のページを検索して手元の「原文」と見比べてみた。
なるほどなるほど。片やボタン上の表記、片やその検索窓の見出しだったのだ。
一語しかない「原文」の意図もホームページ上で見れば何のことだか分かる。
やはり「言っていることではなく言いたいことを訳す」原則は大事なのだと感じた次第。
意外と休みにはならず
午前中は引き合いもなくのんびり過ごしていたが、
夕方になって2件の新規案件が。
先週から引きずっている宿題はないものの、
まるまる休日にはならないものだと妙に感心した。
大人気……?
先週末に得意先へ顔を出してからというもの、仕事が方々から来て大変だった。
せっかくの帰省だというのに一室にこもって通常業務。いや通常より忙しかったかもしれない。
父が「あいつら、何しき来てるんだ……?」と呆れる始末だった。
観光もしなければ休憩もしない、両親との会話も食事だけの有様では無理もないが。
当方も金曜の「宿題」だけ提出してのんびりしている予定だったのだが、
進めている間に4社から声がかかった。うち2社は流石にお断りした。
一通り片付いた今から考えても、引き受けられる業務量ではなかった気がする。
持病?の口内炎やらしゃっくりやらが暴れ出して大変なことは大変だった。
幸い実家にいるので家事は120%母に任せられたが(ごめんなさい)。
波が激しいのはフリーランスの定めとは言うものの、ここまで忙しかったのは恐らく初めて。
仕事量を増やすべく取引先をふやす方針で来たのが吉と出たのか、……。
まあどの仕事もその案件なりに楽しかったのでよしとする。
割り込み
新しい取引先(国内)から初受注した中文和訳にとりかかっていると、英語メールが来た。
先月ホテルのプロモーション資料翻訳を依頼してくれた香港の会社だった。
「ちょっと追加スローガンがあって、なるべく急いで欲しいんだけど」
急いでと言われても別件がある。とは言え無理なら無理と判断して答えなければ。
添付された原稿を見て唖然。何と全文13文字。
断る言い訳を英作文するより納品した方が早いに決まっている。
本件の割り込み、所要時間2分。
ちゃちゃっと納品メールを書き、「お代は要らないよ」。以上。
……90円そこいらのギャラに1000円で済まない振込手数料はかけられないので。
恩に着てもらえるといいな、程度の期待。
テスト
朝メールチェックをしたら、「TEST」と題された英語メールが来ていた。
中文和訳の実力を見るためのテストとのこと。
まずは速やかに受信確認を、とメール本文にあったものの、
日本時間の朝方にイギリスへ返信しても即時そんなもの見る人はいまい。
ということで、2頁ほどあるテストを1時間強で回答し返送した。
何が引っかかったかというと、TESTという文字列そのものである。
業界の慣習か何か知らないが、よその翻訳会社から「テスト」を受けたことはない。
通常「トライアル」と呼ばれているものなら何社でもあるが……
意図あって使い分けされているのだろうか?
試された
香港の個人とおぼしき翻訳事務所からトライアル翻訳依頼が来た(依頼メールは英語)。
200字強の中文和訳とのことなので、軽い気持ちで課題文を開いてびっくり。
文字数がなさすぎて背景が読めない。
どうもレストランのメニュー表らしいのだが、固有名詞が中華すぎる。
これほど訳語のない原文に行き当たったことは多分ここ数年でも初めてだと思う。
どうせ訳すならば、わかりやすく読みやすい、ぱっと見て抵抗を感じない日本語にしたい。
いかな中華料理とは言え、それが何なのか伝わらないようではメニューの役に立たないし
美味しくなさそうな文字列にするのも料理に悪い気がする。
それでも普通、「日本料理」の食材にパパイヤはなしだろう……
依頼元いわく「本番」は厨房で使うマニュアルらしいのだが、
恐らくそちらのほうが翻訳の難易度はぐっと低くなるだろう。
文であれば文脈があるし、一般名詞でそうそう調べがつかないことはない。
とは思うものの、トライアルということは本件訳文が私の採用可否を握っている。
こちらの意図が訳文だけで伝わるだろうか、これほど不安に感じたこともない。
かと言って申し送りが要るようなメニューなんて厭だし。
実力というより底力を試された気分で、正直ややげんなりしている。
なんちゃってモバイル
私は普段、自宅でしかパソコンを使っていない。
持って移動すると言っても帰省ぐらいなのだが、
一泊で旅行に出るときにはどうしたものか迷ったりする。
前回は、背負っていった。
そんなときに限って?仕事が入ったりするのでたちが悪い。
ダンナのe-mobile接続を当てにしていたのだが、圏外だった。
さて、ではそういうとき原稿受領やら訳文納品やらはどうするか。
1.携帯でG-mailを開く(いつものメールチェックと同じ)
2.依頼メールの添付ファイルを携帯のSDメモリにダウンロード
3.携帯をパソコンにUSB接続(マスストレージモード)、パソコンにファイルを移す
で、翻訳作業をパソコンで行ない、逆の流れで納品すればよかったりする。
携帯でG-mailが扱えてGoogleサマサマだとも言えるが、
運悪く原稿ファイルが重かったりすると泣くに泣けないだろうな……
#画像PDFだと10MBぐらいあることもちらほら。
にゃーにゃーは何て鳴くの
語感がいいか悪いかは母語話者にしか分からないよね、という話をしていて思い出した。
そういえば中国語には日本語ほど擬音表現がない。
「猫は猫って鳴くんだよ」とダンナに教えると狐につままれたような顔。
それはそうだろう、猫をネコと読んでしまったらおかしい。
中国語では「猫」の発音は「まぁお」に近い。
同様に「狗(犬より一般的に使われるイヌの字)」は「ごぉぅ」
「牛」は「にぃう」
「雀」は「ちゅぇ」
声調をしっかりつけると鳴き声の擬音に当たらずとも遠からずな感じはしまいか。
これらの単語(文字)は意味と音が結合しているとも言える。
日本語では意味と音が分離しているので「猫がにゃーにゃー鳴く」と言えるのだ。
「にゃーにゃーは何て鳴くの?」と聞かれても……ということになるので、
この句は直訳不能。