何故か最近よく思うのだが、パーマと翻訳は似ている。
利用客が店単位でしかサービスを選べない。
技術者によって仕上がりが違う。
不正解はあるが正解はない。
パーマに縁の薄い諸兄のために説明しておくと、技術を要する化学処理の一種である。
0.前工程
カウンセリング・カット・シャンプーが恒例だが必ずしも全部はない。
1.薬剤、技法を選択する。
ここで何が選ばれるのか、利用客が来店前に知る術はない。
質問すれば答えてくれる場合もあるが、美容師本人が理解していないこともある。
利用客から見ると、ここは店単位でしか選べない。
(「ハズレ」と判断したら二度と行かない程度かと思われる)
2.髪をロットに巻きつけ、薬剤を塗布する。
この工程では実際に形を作るので、ある程度の器用さが求められる。
使用するロットを選ぶのは1人であるが、巻くのはたいてい2~3人で行う。
作業前に打ち合わせを済ませる場合もあれば、いちいち指示が出る場合もある。
誰がどこの責任を取ってくれるのか利用者には分からない。
3.赤外線ヒーターなどを当てて薬剤の浸透を待つ。
この工程では何ら技術を必要としない。
利用客を完全に放置することも可能。
たいてい暇つぶし用の雑誌を渡されるが、お茶を出してくれる店もある。
店の雰囲気はこの時間の快適性を左右する。
美容師からすれば手空きだろうが、利用者が退屈し最も長く感じる時間だ。
4.余分な薬剤を洗い流す。
この工程は助手が行うことが多い。
トリートメントなどにこだわりがある店では引き継ぎや指示などがある。
5.髪を乾かして仕上げる。
たいてい最初の担当者が戻ってきて仕上げを引き取る。
担当者以外が参加していることはまずない。
日常の手入れ方法などを教えてくれる。
担当者個人の知識や主義によるところが大きいと思われる。
とまあ、担当者の腕というより知識にかかっているところが大きい。
カットも入る場合は、カットの技術力のほうが仕上がりを大きく左右する。
視点を変えると、店によって決まってくるのは所謂ハード面と雰囲気のみだ。
機材、薬剤、建具など。
デジタルパーマやドレッドヘアなどは専用の機材を必要とする。
店に備えがなければメニューに載らないだけなので、別に誰も困らない。
利用客として個人的に気になるのは薬剤。
酸性のこともあればアルカリ性のこともあるが、まず説明されることはない。
つまり何が髪に塗られているのか分からないのだが、気にする人は少ないのだろうか。
質問してみて回答がおかしいと感じたこともある。
利用客の髪に何を塗っているのか理解していない美容師が存在するのだ。
この「薬剤」部分が、こちらの業界で言うと案件管理そのものに該当する気がする。
請け負った業務をどこまで分解し、分担するか。
翻訳と一口に言っても、原稿の整理から書式設定まで、実際の工程は多い。
そのうちどれをいつまでに誰が処理するかを割り振るのが翻訳会社の仕事だろうか?
右から左に丸投げではなく、正味業務を切り出してくれる人とはつきあいやすい。
丸投げするならするで、事前に合意があればいい。
いずれにせよ薬剤と技法はひとくくりで価格が設定されているもの。
せめて薬剤品質は安定していてほしいと願う。