整体やアロママッサージに癒やしを求めるのは贅沢なのだろうか。
何店舗も利用しているが中国系施術者の当たりを引いた例しがない。
施術の巧拙ではなく、うるさくて癒やされないのだ。
幸か不幸か中国語なので、私語の内容も聞き取れてしまう。
「1人4000円そこいらとしたって3人さばけば結構な日給になるでしょ」
「週に2回も来るお客、おいしいわ」
「日本語なんてできなくてもへっちゃらよ、41まで一言も喋れなかったもの」
そんな会話を店員同士が大声でしている。
仮に全く内容が分からなかったとしても、落ち着けはしないだろう音量で。
そして施術ベッドの間をかけずり回る子供。
「手伝いで来た人の子」なのだそうだ。
サービス業としてあり得ないと憤慨するのは狭量に過ぎるだろうか。
同業の日本人しかいない店舗でそんな目に遭ったことはない。
これも「安かろう悪かろう」なのだと言うには違和感がある。
確かに高いサービス単価の店では設備の重厚感による遮音性も違う。
しかし、そもそも目の前の客をさておいて店員同士で雑談することがない。
黙ることに費用はかからないはずだ。
また、施術そのもの以外の事情で場を離れることも滅多にない。
「不安がらせないため片手は離すな」という作法すら耳にしたことがある。
癒やしを提供するというのは、そういうことではないだろうか。
彼らに言わせれば、提供しているサービスはマッサージそのものなのかもしれない。
それ以上でもそれ以下でもなく。
血行が良くなればよしと割り切って利用するほかないのか。
いかんせん、そういう所に限って「ストレス貯めてらっしゃいますね」と言ってくる。
東洋医学では心身の相互作用を重視する考えもあるのだ。
身をほぐせば心もほぐれる、と露骨に主張する向きもある。
怒りを貯めてはならない、諸々の詰まりを流せば気も楽になると。
その実践はどこへ行けば体感できるものなのだろう。
都会の喧噪を忘れ極上のひとときを
提供しているはずの店だったのだが。