ひどい引き合いのメールが来た。
「いつもありがとうございました。(中略)はじめまして」
差出人は名前からして中華系であるが、そういう問題ではない。
外資系とは言え都内に事業所を持つ会社の人である。
この調子で客先へ納品メールを書かれるかと思うとぞっとした。
まともに丁寧に訳したとして、その訳文まで開いて頂けるか。
自分が客先の人間だったら読む気を起こさない。
世の中には読まなくてもいい(が訳す)文書もある。
その類であれば「安ければいいか」とは思うかもしれない。
翻って、今の自分の立場でその想定の条件を呑む謂れはない。
食わねど高楊枝
駆け出しの頃は取れなかった選択肢が今ならある。
無論、左団扇だからではない。
まして、先の仮説が正しいとも限らない。
一緒にされたくないから
に尽きる。
くだらない自尊心かもしれないが、断って後悔はしていない。
或いはかつての自分のように引き受ける翻訳者もあろう。
それはその人の判断であるし干渉する術もない。
そういう隙間を捕まえてその会社が栄えるかも分からない。
ただ、飽くまで個人の判断として
日本人は過剰なまでのサービス品質を求める
の一点に賭けている。
さもなくば大陸系の商売に淘汰されるのは時間の問題だ。
だとしても自分が現役の間は保つだろうと読んでいる。
何らかの事情で存続が危ういと感じたら別の仕事を考える。
そこまでしても、一緒にされたくない。