文書を半分に分ける場合、通常は内容がつながったまま前半と後半にするはず。
枚数や行数のため分割した前後の文がちぎれるのはまあご愛敬だろう。
それが何故か奇数ページしかない原稿というものに初めてお目にかかった。
OCR処理をしていて違和感を覚え、問い合わせるも徒労に終わる。
「お客様からの発注が奇数ページのみでした」で取り付く島もなかった。
文の切れ目とページの切れ目が一致する頻度は低い。
まして中国語と日本語では構文も違うので、恐れていた以上の事態に。
内容が半分ないと言うより、ばらばらで話の大筋が見えない。
工業系の文書なので余計に1あってこその2、Aに続いてこそのBなのだが。
担当者に相談したところ「申し送ってください」とのこと。
「以下、次ページ」と「前ページの続き」を乱発するほかなかった。
それからちょうど1か月。何とその残り半分がやってきた。
「前回は客先担当者の手違いでした」とまあ、あっさりしたものである。
今回のお題は、前回の訳文に偶数ページを挿入せよということになった。
言うは易いが「前回の訳文」は自分が納品したそれではない。
納品後に翻訳会社の編集が入り、本文と図表の内容が接ぎ合わされていた。
そのお作法に従って新たな訳文を挿入し色を変えよとの注文である。
編集作業の料金までもらっていないがと思いつつ作業開始。
まずは原文の偶数ページ全体と奇数ページの接続箇所をOCR処理して接ぎ合わせる。
そこから接続箇所を修正しつつ「偶数ページ」を訳し、流れを調整していった。
「図表はないが内容はある」代物と本文の配置で神経と結構な時間を消耗。
それはそうだろう、本来そのための担当者が待機している会社なのだ。
しかしと言おうかやはりと言おうか、負担だったのは主に「翻訳外」作業だった。
意外な部分が前回分と重複しており翻訳作業そのものは順調に進む。
3ファイルの原稿準備にかかった時間で2ファイルを訳出できた。
効率化のための非効率な作業ではないが、やはり苦笑を禁じ得ない。
本件の「残り半分」を私が断っても翻訳会社はまともな「全文」を納品できただろうか。
社内参考用の資料とのことなのだが、客先に読者はいてくれるのだろうか。
よくある疑問ながら、1か月の「間」が否定してきている気がする。
欠けていたものが満ちたすっきり感はあるが、反対に仕事の意義が見えなくなった。
いったい翻訳者は、翻訳会社は、何をするどういう仕事なのだろう。
「原稿の文を別の原語に置き換える」?
それではサービス業未満、機械並の「仕事」ではなかろうか。