何が役に立つのか分かったものではない。
翻訳とは無関係の前職で使っていた書式やら、暇つぶしに読んでいた本の内容やら。
今回はそれどころでなく、ため息をつくほかなかった。
「ホームページから抜粋された記事で、医療関係なんですが」とだけの電話。
文字数と納期しか言われないことも多いので特に気にせず引き受けたところ。
1年半ほど前に気になってやまなかった、あの病気が主題だった。
肺線維症と間質性肺炎。
ある面では不気味なほどすらすらと進む。
個別の療法について調べ直したのは当然として、頻出語彙に何ら抵抗がない。
特に医療や薬学が専門ということはないので、普通なら持っていないはずの語彙。
ごく粗い「話」の流れ。
記憶の片隅に残っていたそんなものが喜び勇んで指先から駆け出していった。
一方で、新たな情報を目にするたび何かが引っかかる。
訳が進むほど、自分が去年に取り残されている感覚も湧いてきた。
そんなことで思い出すとは何と親不孝なことか。
仕事そのものと関係ないところで考え込んでしまい何度か手が止まった。
とはいえ仕事は仕事。
一通り訳して全体を見直し、原文と見比べて、個別に推敲は勿論する。
きれいに整ったな、と判断して納品したらため息が出た。
何かが克服ではなく消化できたような気がする。
肺線維症と間質性肺炎、確か難病ですよね。
先月初めに亡くなった知り合いもこの病気を患っていました(直接の死因ではないが)。
「因果な商売」、分かる気がします。
難病なのは特発性に限るんですよ。うちの場合は明らかに煙草の吸いすぎなんで普通に医療費かかりました…。