我が家の麻婆豆腐には韮と玉葱が大量に入る。
母に作り方を教わった時点で両方とも入っていた。
中華料理店で出される麻婆豆腐に入っているのはたいてい白葱だ。
葱類を使わず豆板醤も入れず花椒と甜麺醤で味付けという店さえある。
それなのにどうして韮を入れたのか、ふと母に訊いてみた。
彼女が知り合いから教わった時点では青葱だったが、嫌いなので韮にしたとのこと。
葱の甘みは玉葱で出し、青みは韮で補えばよかろうとの発想だったそうだ。
いっぽう本場では葱がどうなっているかというと、使わないレシピも存在する。
韮ならぬ大蒜の茎を青みとして使い、煮込まず最後に加えるようだ。
期せずして下手な店より母の味のほうが本場に近いのかもしれない。
尤も私が食べるときは豆板醤も控えめ花椒は抜きなので本場とも別物だが。
一時期、豆板醤と花椒は最後に入れる手はずになっていたが、それでは勿体ない。
両者とも最初に炒めて香りを出すべきものだからだ。
本来「唐辛子を焦がした風味」が麻婆豆腐の肝だという。
辛いものを好む向きは唐辛子、花椒、豆板醤の順で炒め合わせるとよいだろう。
苦手であれば唐辛子と花椒は省いても結構それっぽい味にはなる。
家庭料理に和風も中華もないのかもしれない。