「うわっ、もうインパクト?」
工事予告が投函された翌日、強烈な音に見舞われた。
推定インパクトドリル。
甲高い音と震動が伝わってくる。
自分が奥歯の治療を受けているような感覚だ。
工期は今月いっぱい、平日の日中とのこと。
当方としては仕事にならない。
幸いとりあえずの避難先には恵まれている。
平日の日中ならコワーキングスペース、その前後にはカフェ。
さりとて半月以上も「通勤」するのはつらい。
なにしろ「猛残暑」の中を移動せざるを得ないのだ。
そしてコワーキングスペースに食事の提供はない。
お勤めの人々には当然の環境かもしれないが。
コワーキングスペースそのものは快適と言える。
周りに仕事をする人しかいないから集中しやすい。
「会社」と違って電話の着信がうるさいこともない。
自分だけならまだコワーキングスペースで済む。
客先とのWEB会議が欠かせない家人のほうが問題だ。
会議に合わせて対応ブースを借りるのにも限度がある。
「最悪1日なら許される」と家人は自宅作業を続けた。
客先に騒音が伝わりはせずに済んだようだ。
マイクの指向性のおかげで「出力」には問題ない由。
いかんせん、自身に伝わる騒音は排除しきれない。
かつてなら実家に避難するという選択肢もあった。
しかし母が車を手放してしまったので「足」がない。
帰省中レンタカーを借り通すと出費が洒落にならない。
「気分転換を兼ねてよそに行こうかな」
安いビジネスホテルの連泊でもいいかとつぶやくと。
「いっそワーケーションする?」
正直、家人が乗り気なのは意外だった。
あれよあれよと言う間に逗留先まで決まる。
非日常な日常はこうして幕を開けた。