ものを書くこと、調べること、伝えることについて何冊か本を読んだ。
いますぐ書け、の文章法 [ 堀井憲一郎 ]は週刊誌ライターが語る本筋論。
いかに自分を殺して読者のために書くか、という意識が肝らしい。
文は特定の誰かに宛てたものでなければ、結果として誰にも届かないという。
読者ありき。
だから対象読者を想定して、その人なら何を望むかと考えるのだそうだ。
「文章はサービスである」
プロの物書きはサービスとしての文章を提供するのが仕事だと断定している。
読者をお客と意識すること。
より多くのお客から支持を得られるサービスが、売れる文章。
実務翻訳だと一概に読者すなわちお客だと断定できない側面はある。
誰が報酬をくれるのかと言えば、直接にはその案件の取引先に相違ない。
しかし、その取引先が翻訳会社(=仲介業者)の場合、まず純然たる読者にはならない。
読者は常にその先の遠くにいる。
それでも、誰が読むのかはどうにかして想定できるものだ。
専門の学者、現場の技術者、経営者、消費者、…。
時として、それらの像と原文作者との距離を訳文に反映させる必要も出てくる。
内容は飽くまで原文のとおりにしながら、やはり読者の目に映るものを考える。
その作業を要さない訳は翻訳と呼ばず、「訳読」と言うそうだ。
心しよう。それだけでもなにがしかは違うはずだ。