強く自戒を込めて。
できるだけのことをしても、できない仕事があった。
「専門用語はお気軽にご質問ください」と回ってきたのが水曜の晩。
従来ならそう言われていても、手元の辞書と検索でどうにか調べがついていた。
まして質問してもよいのであれば、と二つ返事で引き受けたはいいが。
ほんの10枚ほどの原稿で、不明な単語が30を超えた。
手元の中日辞典や工業用語辞典はもとより、大陸のサイトで検索して回っても不明。
対応する日本語はおろか、そもそもどういう意味なのか分からないものがその半分。
こんなこともあるのかと愕然とした。
余りにも古い用語なためネット上に情報が載っていないようだ。
例えば一輪台車を「ねこ」というような比喩が由来だという辺りまでしか見えない。
窮状を打開すべく、まずは不明な用語に印を付けて原語のままにしておくことにした。
問い合わせて調べてもらうにしても、五月雨式では先方に迷惑がかかる。
それにしても木曜中には目鼻がつくかと思っていたら甘かった。
どうしてもというところを飛ばしても、まるで筆が進まない。
手遅れになる前に、と思い立ち、担当者に相談したのが木曜の晩。
金曜のうちに仮訳と不明点一覧を提出して、残りを調べてもらってもよいかと聞いた。
快諾してもらえたことに感謝し、金曜の朝までかかって仮納品。
納期は次週火曜(つまり今日)なのだが、ゆえに、金曜までには出したかったのだ。
向こうにしても、平日でないと調べのつかないものも多々あろう。
受領通知には「現代の専門家でも難しい用語かもしれません」と。
怠惰やわがままで押しつけたわけでないことは理解してもらえたらしい。
できるだけのことはしようと、こちらも市立図書館で参考図書を漁った。
流石の横浜市でも中日の資料は少なく、英日中の専門用語辞書を当たることに。
この英日中辞書というのが曲者で、収録がまさにその順になっている。
英語で当たりが付けられれば日本語訳も中国語訳も容易に分かるのだが。
日本語、中国語から調べるにはまず索引をめくる必要がある。
当然、中国語から調べたいのであるが、ピンイン(読み)索引がない。
あるのは「部首索引」なのだが、日本の漢和辞書とは部首の定義が違う。
(簡体字になったため本来の文字と違う部首に分類された経緯もあるようだ)
単語の先頭文字の部首がどれに該当するか調べるだけで数分。
それから当該の文字が収録されているか否かを調べ、7割方がふるい落とされた。
残る3割の先頭文字から見出し語そのものを見つけた段階で、3語。
それとて掲載ページまでしか分からないので、そのページでしらみつぶしに探すのだ。
結果、2時間かかって3語。
土曜日には県立図書館の大型辞書を当たったが、やはり英日中。
結果、正味4時間で8語。
その11語を反映させて残りについては申し送るほかなかった。
自分にできることはやりきったはずだが、どうにも悔いが残る。
料金を満額もらえたとして、日給換算では通常案件の半分を下回ることに。
まして今回の出来では、まともに働いたと認められなくとも文句は言えない。
できないことをできると言った信用ならん奴になってしまうのだろうか。