関西に転居して三年ほど経つが、実は有馬温泉を訪れたことがなかった。
半端に近いので行こうという気合いが足りなかったのと、ダンナがいい顔をしなかったのが主な原因。
それがふと、先週末の仕事でくたくたになり「温泉~」とぼやいていたら「有馬でも行く?」となった。
行き当たりばったりで思いついたらすぐ形にしてしまうのが我が家の流儀(らしい)。
何路線かを乗り継いだはずなのだが、改札は一度しか出なかった不思議。
車窓から見える寒々しい落葉樹だらけの風景も意外と旅情をかきたててくれた。
見た目だけでなく本当に寒かったのだが。
神戸電鉄で数十分、体感温度は三度ほど下がった気がする。
よもや晴れた日の午後二時に手袋をはめようとは思わなかった。
しかしふと道ばたを見ると積雪。納得してコートの襟を立てる。
チェックインまで時間があったので、荷物だけ宿に預けて外湯「銀の湯」へ。
宿泊先には金泉が引いてあると聞いていたので、あえて銀泉を浴びに。
男女別の内風呂があるだけの素朴な共同浴場だが、こざっぱりとしていて快適だった。
特に臭いや手触りを感じるものではなかったが、染みこむような温まり方。
寒い方がありがたみを感じるということなのだろうか。
金泉とやらには夕食後に浸かった。
露天風呂だけが温泉なので、内風呂でさっと温まってから前だけ隠して外へ。
浴槽までは思っていたより遠かったが、間が良かったと見えて独り占めできた。
外気が冷えているのでのぼせはしないものの、ほんの数分でほかほかに。
一泊二日で冷え性が治ったりはしないだろうとは思いつつ、期待してしまいそうなお湯だった。