プロの「いい女」

銀座流売れっ娘ホステスの会話術なる本を読んでみた。
新人ホステス用の教科書といった感じ。
一般人がプロのノウハウから学ぶという目的にはあまり適さない気がする。
そして私にはホステスは務まるまいとも思った。
つきあう必要はあるが親しくもない相手との交流には生かせるのかもしれない。
ただ、本当に親しい/親しくなりたい相手にそんな接し方ができるだろうか。


「どんなことでも、限定したり断定したりすればするほど、相手が自由に想像して解釈したり、
自分にとって有利に働く方向へと転換させたりできなくなってしまいます。
そうならないよう、相手の気持ち次第で黒にも白にもなりうる抽象的な表現を
使うのが好ましいのです。」(P101)


こちらの仕事で使う言葉の選び方とは真逆に感じる。
あるいは頭を切り換えて「こっちの仕事」と割り切ればそういう話術もできるかもしれない。
ただ、一個の女として身につけられるとも身につけたいとも思えないのだ。


「女性としてのアイデンティティを捨てたような言葉を聞くと、激しく幻滅するのです。」(P72)


ここでとどめを刺された気がする。
断定もせず否定もせず、拒絶もせず主張もしない。
丸呑みもせず勝負もせず、そのまま受け入れて包み込む。
数百歩譲ってそれが仕事なら考えないでもないが、素の自分では無理だ。
(既に拒絶し断定してしまっている)
諦めたとか後ろ向きになっている気分ではなく、違うのだと思っている。
ここで描かれた「売れっ娘」が「いい女」であることは否定しない。むしろ賛同する。
が、読者全員が同じ定義によるところの「いい女」を目指す必要もなかろう。


観察対象として示された「男」の思考パターンのほうがよほど共感できる。
言動の性差に関する本を読めば読むほど、自身は男女なのだと思えてきた。
恐らく、そのこと自体はいいことでも悪いことでもなく、単なる個性だ。
いかんせん、それでも残ってくれる人と付き合いたいというのは、甘えか我が侭か。

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