下請業者

中小企業庁から「代表取締役殿」宛ての封書が届いた。
すぐ上の行には間違いなく私の名前が記されているので私宛てなのだろう。
開いてみると、「親事業者との取引に関する調査について」と題したアンケートだった。
「下請代金支払遅延等防止法」とやらの状況確認が目的だそうだ。
ちなみに、ここで言う「親事業者」は同法の用語であり、資本関係の有無は不問。


質問票冊子の末尾にFAQ(よくある質問)が付いているのは好ましい。
しかし

Q14 インターネットを利用した回答の作成・提出とはどういうものですか。
A インターネットを利用した回答の作成・提出とは、インターネット回線上を通じて、回答を電子的に提出するものです。

この無意味さはいかがなものか。
せっかく丁寧に制度のあらましと質問事項を並べてきたのに、最後の最後がこれなのだ。


ともあれ同法の趣旨は悪くない。
お役所の意図としては「親事業者」情報を除きむしろ拡散してほしそうでもある。
詳細は公式ページ掲載のPDFをご覧いただくとして、気に掛かった点を挙げてみたい。

設問1より
 親事業者は、下請事業者に発注する際、発注内容、下請代金の額、支払期日等の必要記載事項をすべて記載した書面(注文書、契約書等)を交付する義務があります。

今回アンケートの対象となっている事業者は問題なかったが、この項目は危うい。
上記「必要記載事項」が全て揃った発注書を出す取引先は少ないのではなかろうか。
十指に余る翻訳会社と取引実績があるのだが、即座に問題なしと言えるのはせいぜい3社。

設問4より
 親事業者は、下請事業者に責任がない場合には、たとえ下請事業者と事前に合意していたとしても、発注書面に記載した下請代金の額を減じることは禁止されています。
 また、減額の名目、方法、金額の多少を問わず、発注書面に記載した下請代金の額を、発注後いつの時点で減じることも禁止されています。

代金を記載したら減額禁止なのだろうか、だから代金を明示しない発注書が出るのだろうか。
正式発注の連絡を受けて作業開始後に減額された経験は何度かある。
「そういう会社とは付き合うな」ぐらいしか対処法はないものだろうか。
それとも同法を盾に挑戦してみるべきなのか?
とはいえ現実としてそんな余裕はない。

設問5より
 親事業者は、下請事業者に責任がない場合には
① 納品前(又は役務の提供前)に、発注内容を変更し当初の発注内容と異なる作業を行わせる
② 納品後(又は役務の提供後)に、当初の発注内容にない追加的な作業を行わせる
ことにより、下請事業者の利益を不当に害することは禁止されています。

これを見て苦笑した同業の士は多いことかと思う。
翻訳会社もまた下請事業者であるが、「利益を不当に害すること」の「不当」の線引きは?
作業開始後にキャンセルなど、①どころでない事態もそう珍しくはない。


知っていたところで一個人がどうこうできるものではないのかもしれないが。

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