せり上がる敷居

着物には若い頃から興味を持っていたのだが、漠然と怖くて手を出さずにいた。
思い切って着付けのお試し講座を受けてみたのが半年前。
基本の「き」の字はどうにか身につけられたと思う。
しかし自分で着物を買おうとして盛大に躓いた。
着物屋が怖い。


着物屋の接客、売り方が「高いものを売りつけられそうで怖い」典型なのだ。
手頃な値段で「洗える着物」を売る店があり、ここならと一着だけは買えたのだが。
その店のメールマガジンで告知されたバーゲンに足を運んで、息を呑んだ。
バーゲンなる文字列で想像する風景とまるで違う。
受付で住所と氏名を記入、利用店舗を聞かれて答えると、場内放送でそこの店員が登場。
買わずば帰さじの勢いに血の気が引いた。
悪徳商法の名前がいくつも脳裏をよぎる。
「ごゆっくりご覧くださいね」と言われても監視されている感覚ではとても無理だ。
裄が人並みより必要なので、色柄だけでぽんと買うわけに行かないのも確かなのだが。
知識も十分ではないので聞きたいこともあるが、ぴったりついて歩かれるのは怖い。
見回すと他の来場客は落ち着いたそぶりであるが、親以上の世代ばかり。
まだまだ知識と免疫がつかないうちは早いということか。
それにしてもこの業界はこんな商法で先細にならないのか疑問ではある。
幸か不幸か裄丈の都合で一着も買わず、そのまま逃げるように退場した。
客の立場でありながらここまで萎縮するのは不本意ながら、怖いのは事実である。
満足な買い物をするためには、どういった修行が必要なのだろうか。

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