出版翻訳講座の日中訳3回目。
コピー類と法律の紹介という、対照的な難敵が相手だった。
前者は読者に見せるのを本音にするか建前にしておくか判断に悩むところだ。
そういうときは、複数の訳例を用意しておけばいいという。
依頼元の意図や好みに合わせて選んでもらうなり相談するなり対応のしようはある。
今回の要点は、原文の「解体」だった。
該当する中国語を考える前に、内容を「読み込む」のが重要だという。
「読み取る」のではなく、発信者ないし受信者としての当事者意識が必要。
文の見た目に囚われず、記された事象を表に整理して構成を考え直す。
辞書的な意味にこだわらないこと
記述が曖昧なときや前後が入り組んでいるとき特に有効。
原文が完全なものだと信じ込まないこと
発信者との共同作業として内容を整理し、受信者として文を読む。
いずれかの側に立つのではなく、両方の視点に立ってこそ翻訳の仕事が成立する。
翻訳には意味の正しさ、意味のつながり、示す事象の3軸がある。
「間違いではないがしっくり来ない」訳文には次元が足りない。
いたく概念的な話だが、感覚としては理解できる。
正しさは調べれば分かる。つながりの把握には本当の広く深い知識が必要。
ここで言う「つながり」には、文脈も定型表現も含む。
日本語では省略され埋没している要素同士の関係には特に要注意。
意味上のつながりがなくとも音でつながっており違和感のない組み合わせなどもある。
問題なのはこの「違和感」を日本語話者だけが気づかない可能性だ。
つまり他言語にそのまま訳すと「どうしても」「何故か」おかしくなる原因。
また、中国語には中国語だけのつながりも存在する。
ここが弱点だということが見えてきた。
事象を捉え、整理してつながりを見出し、訳文を紡ぎ出す
事象の把握までは一定の評価を頂けるようになった。
次の段階は、つながりのきちんとした再構成。