こまの撮影にプロ中のプロをお呼びしてしまった。
『インコのおとちゃん』で大人気の村東剛さんに足を伸ばしていただいたのだ。
本人が見えなくなるほどの機材の山に囲まれて上大岡駅に登場。
「これで普通ですよ」と言われてもこちらがむしろ恐縮と言うか緊張する重装備だった。
嵩張ろうと重かろうと宅配で先に送らないのは「商売道具」と言われれば納得はする。
出先では必要なものが調達できないと「保険をかけると、あれもこれも要る」とのこと。
かくしてストロボが2台、三脚が大小、レンズキットが…という構成になったようだ。
個人客としてフリーランスの人に仕事を依頼するなど初めての経験である。
「遊びにいらして」ではなく、先に報酬の協議を済ませてある。
口約束の軽さではない、口頭での契約。
ご本人の愛鳥「おとちゃん」もコザクラインコなだけに被写体の敏捷さは伝わっている。
気ままで、落ち着きなく、相当な速さで動く、淡色の被写体。
人間のように「もう一度そこに座って」と言っても聞いてくれるものではない。
しかも物陰や狭いところが好きで人見知りの写真嫌いという難題なのだ。
それをどう静止画像に収めてくれるのか、手順や工夫も見ていて面白い。
まずは場に合わせた機材の調整が入るあたりが素人には斬新だった。
捉えるものは畢竟「光の反射」なので光源の追加とカメラの感受性の調整が入る。
強い光があるだけで背景がぼやけるという因果も説明してもらった。
しばらく被写体インコを観察して動きの特徴をつかみ、撮る場面を大枠で決める。
しかしやはり相手はインコと言うかこまと言うか、やはり人間の思うようには動かない。
動いてくれはするのだが、狙った軌跡で飛んでくれる相手ではなかった。
それでも、機嫌を取りつつ何度も何度も撮り直す。
こまが飽きてしまって撮影を断念したコースもいくつかあった。
それでも、敢えて、機嫌を取りつつ何度も何度も撮り直す。
人間のほうも機材やら小道具やらを持って無理な姿勢を何度も作り、再現を試みる。
できるまでやるのが本物の仕事だと感心した、と言っては失礼なのだろうか。
単純にくり返すこともあり、切り口を変えることもある。
ひたすら自身が納得するまで特定のイメージに向き合い、画像に落とし込んでいく。
ものものしいほど派手で切ないほど地味な作業。
被写体にされたこまもがんばってくれた。
写真嫌いで飽きっぽい性格の割に、粘り強く同じ動作を試みてくれた。
それでも一瞬の間でピントがずれることもあれば思った形の絵にならないこともある。
かれこれ半日の格闘を2回。
肉眼で捉えられないためずっと知らなかったこまの姿がいくつも形になった。
可愛いものもあり、かっこいいものもあり。
「他人の鳥を撮るのは勝手が違って難しいですわ」とのことだったが、流石の作品群に。
約束の報酬は受け取っていただいた。
仕事として依頼したのだし、相応の用意も成果物も目に見えるのだからそれで当然。
ましてその途中経過で楽しませていただいてもいる。
贅沢と言えば贅沢ながら貴重な経験となった。
これほどまでに殿下に惚れ惚れしたことがありません。
いつものふわもこさんの撮る殿下も可愛いんですが、こっちはまたなんというか劇画タッチというか、やはりプロの仕事はすごいもんですね。
きりっとした美しさを引き出してくれた感じがします。撮影現場に立ち会って感心したことも多々あり、本当に「流石」の一言に尽きます。