カナがない世界

日本語にはひらがな、カタカナという非常に便利な表音文字がある。
中国語にはない。


表音文字がないので、中国語では何でもかんでも漢字表記である。
中国語に意訳してあるものもあれば音訳しているものもある。
前者でつらいのは「旧金山」がサンフランシスコを指す場合などだ。
他国の地名をも訳すときは訳してしまう中国語文化。
今回は後者にかなり苦労したわけだが。
学術論文には当然のように参考文献がたくさん入る。
今回の原稿では文献名は意訳、著者名は音訳されていた。
しかも中国語訳の訳者名がない。
これが何を意味するかお分かりだろうか。
読者が日本人だからこそ和訳しても役に立たないのだ。
引用元が日本語の著書でない限り、日本語で文献情報を示しても意味がない。
洋書ならば英語で示せば参考の役には立つ。
お題目は簡単だ。
言うは易く行うは難し、である。
運がよければ中国語表記された著者名を検索しただけで何となく分かる。
ただ少なくとも今回の場合、そのものずばりの回答が得られた実績はない。
せいぜい著者名のアルファベット表記を見つけられる程度だ。
フルネームは分からず姓名どちらかで洋書を検索するはめになる。
文献名に当たりをつけて英単語と人名の組み合わせで「らしきもの」を探し続ける。
そこに立ちはだかる表記ゆれと誤植の壁。
どうも人名用の当て字は一意に決まっているとは限らないらしい。
ピーターとピョートルでは大違いなのだが、そんなことは誰も聞いてくれない。
この苦労、翻訳なんだろうか。
ともあれ流通されている本はどうにか調べがついた。
それでも専門誌や論文集など探しようがないものが出てきてしまう。
ここはひとつ文献検索のプロに頼ってみようかと、県立図書館に問い合わせてみた。
推定される著者名、文献名を中国語から和訳したもの、出版年しか情報はない。
これだけ提供情報がないのだから判明せずともやむなし、と思っていたが。
流石はプロ、原著の文献情報をしっかり調べ上げてくれた。
調査の経緯まで教えてくれたのだが、一般人には使えないデータベースもあった。
専門の技能だけでなく道具まであって成り立つ仕事なのかと妙に感心した。
うまく外部に頼ることも実務上は大事なのだと身にしみた次第。

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