古くても手放せない

元来の性格は新しいもの好きながら、Windowsは7止まりで様子を見ている。
重宝しているソフトが古いので最新OSでも使えるか不安だからだ。


高電社の中国語OCR「ChinaScan2」は何と2002年製だが、実に性能がよい。
同社が開発を打ち切り後継製品と称して出したものより2割は高精度だ。
中国語文字の認識率95%という謳い文句も過言ではない。
誤認識した文字の修正も「前関連」機能が優秀なので手入力する必要がほぼない。
※カーソルの前の文字から次に来る文字の候補を一覧表示する機能。
 例えば「車●」の「●」には「体」「輌」「軸」といった候補が表示される。

日本語や英語だと認識率が90%程度に落ちるが使用頻度を考えると問題ない。
そして「TRADOS」は断然2007だ。
「Translator’s Workbench」を「Word」画面でマクロ呼び出しできるのが快適すぎる。
別途「Studio 2014」も持っているのだが、指定されない限り使っていない。
※そもそもツールの使用を指示されること自体が年に数度しかない
原文が左、訳文が右に来る表示もさることながら、目が原稿を離れてしまう。
2007ならば原稿に1段落ずつ割り込んで作業できるのでバランスが取りやすい。
世の人は既に違うのかもしれないが、自分にとっては何より直感的なのだ。
そこに、この古いもの同士の組み合わせで救われる事件が起きてしまった。
ただでさえ専門用語だらけで1文字の間違いが命取りになる医療関連の案件。
印刷物をスキャンどころかデジカメで撮影した画像が「原稿」だったのだ。
しかも幸か不幸かdoc形式の原稿も同封されている。
せめてスキャン原稿にならないかと翻訳会社に声をかけつつdoc原稿を先に訳す。
結果的に一回り解像度の高い写真「原稿」が支給された。
自分は辛うじて読めるがOCRに堪えない部分が半分ほどある。
「Photoshop」で補正しても3割は読めない。
しかも医療用語はOCRの「前関連」辞書になく、この辞書は自分で更新できない。
ただ幸い、使われている用語や表現は先に訳した文書とほぼ共通だった。
そこで「TRADOS 2007」の出番である。
問題が残ったままのOCR原稿を「Word」で開き、「訳語検索」を駆使する。
生きている用語で対訳を当たれば前後の文が何通りも見つかるという寸法だ。
そこで訳文ではなく原文をコピーし、誤認識箇所に貼り付けていった。
能力の問題でもあるが、単純に中国語を入力するより遙かに早い。
まあ数倍の努力を払えば2014でもできるのだろうが、このほうが経済的だろう。
何しろ報酬がもらえる対象は訳文であって読み込む作業ではない。
ゆえに写真「原稿」案件は基本的に断っているのだが、今回は断り損ねた。
こういう現実を助けてくれるのは、何故か決まって古い道具なのだ。
自分が古くなってきたということなのだろうか。
熟練と思ってもらえれば有り難いものだが。

“古くても手放せない” への2件の返信

  1. とてもおもしろいエントリでした。
    古いものに助けられることってけっこうあるけど、デジタルでもそういう状況が発生しうるって興味深い。
    自分も写真原稿とか、PDFファイルを印刷したものをスキャンした原稿とかありますが、げんなりしますね。
    あとTRADOSの原文・訳文の左右表示、あれ上下表示とかも選択可能にしてくれると良いなとずっと思ってるんですが…うーん。

  2. PDFファイルを印刷したものをスキャンした原稿……だったら元のPDFもらったほうがましですよね諸々。

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