於:西安→上海
本によると、兵馬俑の博物館は市内から車で一時間ほどかかり、八時半から開くという。
できるだけ見ることに時間を割くには、七時に出発すべし!と早起きして朝食を摂る。
郊外「東線」観光には昨日ホテルで予約したカムリを使う。半日チャーターというやつだ。
いちいち流しの車を探す手間が省けるだけでも余裕ができるだろうとの作戦。
博物館へは八時半ほぼぴったりに着いた。公園がまだ開門していない。
運ちゃんが中に呼びかけると、おやじさんが眠そうに南京錠をはずして開門した。
今日の一番乗りである。なかなか気分がいい。更に学割も効いて朝からご機嫌!
博物館には一号ホールから三号ホールまであるが、当然どこにも客はいなかった。
ただガイドの押し売りが一人いて少しやかましかっただけ。ふりきって一号ホール内部へ。
遺物保存のためなのか広すぎて諦めたのか、暖房が全くない。冷たい中に俑がごっそり。
人にも弓手やら御者やら色々な職業が見て取れる。が、服装はほぼ一緒に見えた。
よく見れば髷やら冠やらがついているのだが、今いち暗くてそこまで覗くのは怖い。
喋ると声が妙に響く。まるで生気のないこの空間では誰の答える気配もないのに。
二号、三号ホールは新しいものだそうで、寒いのは同じだが見やすい照明がついていた。
発掘作業の途中段階を紹介する掘りだしかけの馬や青銅製の武器なども飾ってあった。
観光でなく勉強に来てもそれなりに収穫はできそうな密度の濃い展示館という印象。
次に訪れたのは始皇帝陵。大きさは下からでは視界に入りきらない。
先が見えないほど延々と続く階段には、物売りが何人か来て商売支度をしていた。
階段というと独秀峰の記憶がまだ抜けないが、頑張ってみようということで最後まで登る。
最高地点についてみると何のことはない小高い丘といった感じしかしなかった。
見下ろす西安市内は霧に煙っている様子。街が来た道よりはるか遠くに感じられた。
ここにある地下宮殿とやらは非公開らしく、宝物は別の施設で公開とのこと。それはまあいい。
これで頂上の石榴売りと入場券売場の妖しいハードロックさえなかったらなぁ。
そして華清池。楊貴妃が入ったとかいう温泉なんかがあったりする。
楊貴妃像の立つ「九龍池」は温泉とは関係ないらしく、三mmほどの氷が張っていた。
唐代建築の湯殿を次々と見て回るが、どこにもお湯の張ってある浴槽はない。
底まで良く見えるようにとの配慮なのだろうか。ともあれどれも広く、贅沢な趣である。
建物を塗り直した時ペンキを使ってしまったらしく、色がどうも毒々しい。
これが少し枯れた丹塗の風情を持っていたら、湯殿だけでも十分に色っぽいのに。
蓮や海棠など、花の名前を付けた湯殿にはそれぞれを象った浴槽がある。割と深い。
「温泉って書いてはあるくせに、どこなんだよぅ」と振り返るに、湯気の立つ噴水が?
蓮の花に似せた台から吹き上がってくるお湯は、説明によると四十三度あるそうだ。
五角かかったが、手先をしばらく浸しただけで実に気持ちいい。半分は寒さのせいだが。
おち。庭園の外周にある建物は公衆浴場で、まさに「温泉」だった。ちょっと幻滅。
運ちゃんが勧めるので半坡博物館とやらに行ってみたが、面白い所なし。
ただ入口が巨大な女体である以外、何を見ても意味が判らない。さっさと切り上げる。
市内に戻って今度は自力観光。昨日から気になっていた包子をとうとう買って頬張る。
海老、高菜、貝、小豆どれも一つ一元。味はあっさりめ。あつあつで実に旨かった。
邪推ながら、小豆は日本からの逆輸入ではなかろうか?だって「あんまん」の味なのだ。
そして余り遠くない鐘楼まで歩く。地下道内に参観券売場があるのはやや意表を突かれた。
地上に登り、またまた階段。息を切らしながら市の四方を眺め、写真を撮る。
城壁までは見通せないほど遠いので、以降は車を拾って動くことにした。
まずは「安定門」こと西門を見る。客がまばらで非常に平和だった。
城壁の上に立ち、西の方シルクロードであった辺りをみはるかす。言葉を無くす。
門の上にある建物には天皇陛下の来た跡だとかいう見苦しい一角があった。
この下手な商売っけさえなかったらもっと感慨もあったろうに。
市の外周を辿って今度は大雁塔。手荷物は強制的に預けさせられる。かなり不安。
入場券だけでは塔まで入れてくれず、更に観覧料を取られる。ぼられてる気分。
階段が急な上に天井が低く首まで疲れて途中で息も絶え絶えになる。かなり笑われた。
何より哀しかったのは、登り切っても展望台に類する設備がなかったこと。骨折り損?
大雁塔を見た以上は小雁塔も行くぞ、ということで軽タクを拾いかなり北上する。
さっきとメーターの数字が違うのは何故だろう。ま、安い分にはいいか。
ここでも荷物は預けさせられたが、階段の幅を見ると納得できてしまう狭さだった。
へろへろぷぅになりながらやっとこさ小雁塔を踏破、と思いきや…..頂上に立てない。
奥行が手の幅ほどしかない階段から一歩で最上部に上がってしまったら降りられんぞ。
「えーっ、いいのぉ?」などと冷かされつつ、明日ある身なので空だけ覗いて退却。
余裕を持ってそろそろ空港に行くか、と軽を拾ったら何やらがみがみ言われた。
ずっと乗ると割高だとか何番の飛行機に乗りたいんだとか、とりあえずやかましい。
急ぎじゃないから途中から空港バスにしようか、といったところで運ちゃん御用。
いわゆる自転車道に乗入れたまま走っていたせいでキップを切られたらしい。
どうでもいいけどそれを客のせいにするなっちゅうの(苦笑)。
四時半に出ると言っていたバスが十五分にででくれて助かった。飛行機にほぼぴったり。
結論:西安のサービス業でほめられるのはバス乗場のおばさんだけだ。