勤務先で利用しているバイク便業者が発送伝票の束を持ってきた。
専用受付番号や発信元住所が印字してあるだけでも重宝する。
そして営業担当とおぼしき彼がその束と一緒に手渡したものは。
赤・青・黄色の箱ティッシュだった。
箱は小ぶりで、正方形の一辺がよくある箱ティッシュの短辺ぐらい。
厚みはまあ一緒か。
微妙な笑みを禁じえないのは、その体裁だった。
三つ重ねて輪ゴムを十字にかけてある。
きっと販促企画は1個ずつの配布を期待して作っただろうに、
去年の箱よりだいぶ小さいのを営業現場は気にしていたのだろう。
「お心遣いありがとうございます」が口をついて出た。
現場は頑張っているのだろう、それぞれに。
想定外
前日もらった仕事が2本もあったので、朝からとっとと帰るつもりでいた。
打ち合わせをこなし、調べものも一応おしまい。
さてハードディスクの掃除でもしようかと思った矢先。
「おともだちから電話だよ~ん」
……おともだち?
出てみるとS先生だった。
「先週もらった数表にいくつか変数の追加をしてほしくって……」
そこまではよかった。
変数は問題なく追加できて、結果もちゃんと書き出した。
しかし容量が大きすぎてメールでは送れそうにない。
分割する旨とその方法を伝えようと受話器を取ったのだが。
何回かけても出ない。
待っているうち予定より2時間も遅くなってしまった。
諦めてメールに伝えたかった内容を書き込み、送信ボタンを押す。
が。送信しきれない。
これまた10分たっても画面が変わらない。
重いから遅いのかな、それにしてももうそろそろ……と思っていると、落ちた。
「サーバーが応答しません」
人のせいならともかく、何で機械のせいで残業せないかんのじゃ。
数分後(ちゃんと送信できれば意外と早かった)。
近くの席の人に「私もう帰りますから」と声をかけ、端末の電源を落とす。
やれやれ、と上着を羽織ったが早いか
「おともだちから電話~」
振り出しに戻る。
こっちもおかわり
午前から打合せが4件あった。
最初の打合せは偉い人だらけの課会。私はもぐりで兼務している。
お昼休みに取引先との進捗確認。
午後すぐから正式な所属先のチーム会。
そのあと上半期の振り返りと下半期の業務内容確認。
最初の打合せにて。
偉い人F「このデータベースの一部集計とかって運用会社の人に頼んでいいの?」
偉い人A「だめですよ、運用しかお願いしてないんだから」
偉い人F「ぢゃ誰に頼むもの?」
偉い?人S「操作権限はうちにあるんですけどね」
偉い人Y「権限って何か資格とか関係してたっけ?」
偉い?人T「いや別にないですよ。でもよくわかんなかったりして」
偉い人F「だったら分かる人に権限あげたら?」
一同「……あ。」
偉い人Y「……(私のほうを見て)やる?」
私「喜んで」
扱えるデータの種類が増えるのは個人的にうれしい。
会社への貢献とかいう殊勝なものではなく、好奇心である。
最後の面談にて。
上司「ごめんね~、業務追加になっちゃったから振り返りだけ今やるわ」
私「今朝のあれですか?」
上司「それも、まぁあるけど。もろもろ他にも要望があって」
上半期の査定提示。
上司「どう?思ったより……」
私「全く期待してませんでしたので」
個人事業との兼ね合いがあり、昇給も賞与も本気で嬉しくなかった。
上司「何でまた」
私「これといって結果を出したりもしてませんし」
上司「ま、そのへんは会社と個人の認識ギャップかね。
そういうわけで仕事はこれからまだ増えるし」
期待していいよ、と言われたが、やっぱり嬉しくない。
足を洗いにくくなるから。
短期的には会社仕事も多いほうがありがたいのだが、一方であまり必要な人材になりたくないという本音もある。
自分の願望同士が矛盾している。
ないものはもらえない
勤務先で上長印の必要な書類が発生。
私「はんこ下さい!」
上司「ごめ~ん…」
私「?」
定期的に発生する書類だし、却下される要素はない。
……
上司「うちに忘れてきた」
それは無理
月初の人事異動に伴い、隣の席に移ってきたF様。
恐ろしく顔が広いので名刺がすぐ切れてしまう。
その彼女が、その夥しい取引先に異動のご挨拶。
挨拶状も大変な数なので?事務子会社に送ってもらうほど。
その校正依頼が子会社から送られてきたのだが、何枚か見ているうち彼女がさもおかしげに笑い出した。
F様「……これはないやんなぁ」
私「?その原稿が?」
F様「この住所がな」
指し示す先を見て私も吹き出してしまった。
”米国ミネソタ州”と日本語で縦書き。
あちらのZIPコードもご丁寧に郵便番号然としている。
日本を出ることはできても、米国で迷子になるであろう。
微妙な立場
同僚に言わせると、上司は私に頭が上がらないように見えるらしい。
言われたときは「そんなあほな」としか思わなかったが、
何となく裏が取れてしまった気がしてきている。
飽くまで副業のつもりということもあり、勤務先での職位は契約社員である。
本来なら部長級である上司との間に正社員が入るはずのところらしい。
しかし現実として、そんな存在は見当たらないのである。
去年は一応いたのだが、退職されてしまい空席になったままなのだ。
つまり、私はその人の分のお留守番もしていることになる。
何か外部から問い合わせがあったら取り次げばよいと言えばそれまでだが、
そう簡単につかまる相手ではないので情報の一次処理が必要である。
しかも、今や私でないと回答できない質問も少なくない。
正社員の助手のつもりが身代わりになってしまった、とも言える。
そのへんのところは上司も気にかけてくれているようだ。
振り返り面談で「会社の事情で正社員に登用する訳には行かないが」と言われた。
別にそんな希望はそもそもないので私は気にしていない。
今の気楽さのほうがよほど居心地がいい(と思うことにしている)のだ。
そして「~行かないが」の「が」の続き。
外部要因が色々あって個人目標が未達成なのだが、
「業務の個別性を考慮して、最大限の評価はさせてもらう」とのこと。
…….昇給やら何やら、本当にそんなことは望んでいないのだが。
もらえるものは多いに越したことはない。
ただ、そんなに私の価値があるのかが疑問なだけである。
きれいごとでも何でもなく、かなり疑わしい。
そして、あまり重宝されても後で困る気がしている。
本業にする気がないので。
評価(額)の高さより足の洗いやすさを取りたい、という希望は
会社から見たら受け入れがたいものなのだろうか?
コンビニエント?
勤務先から最寄りのコンビニへはエレベーターで行く。
行きは勝手に開く自動ドアだが、帰りには入館証が要る。
この入館証、非接触式だが裏表はあるらしい。
1日1度しか使わないこの札のために財布の特等席を確保するのは厭だ。
さてその店内。
1回分400円を超える入浴剤が出入口すぐの棚に鎮座ましましている。
ゑ?何故オフィス街の只中で入浴剤?
さらにその棚、下の段を見ると金属製の知恵の輪が。
そんなものより銀行ATMが欲しいと思うのは私だけだろうか。
出勤しちゃった
夏休み宣言したはずなのに、出勤してしまった。
というのも、昨日また宿題が出されたからである。
開いて見ると先日の作業がぶり返したような中身。
抽出元が少し違うだけで内容はほぼ同じらしいが、かなり適当に書かれている文字列を「きれいにする」宿題。
延々とやっていると気分は賽の河原。
更に塞ぎこませるのが、帰りにすれ違う人の波。
夏休み前回の観光客達がまぶしい。
そして私の夏休みも終わった。
夏休んでみた
急ぎだったらしい仕事が昨日までに片付き、残りの件も進め方と納期が決まった。
敢えて休日出勤してまでこなす優先度でもないため、今日と明日は休むと宣言。
#そもそも休みのはずだが
いつものスーパーに朝から行ってみた。
出勤しない分の運動不足を少しでも補うため、30分の徒歩である。
お客が少ない。ついでに品数も少ない。店員がのんきだ。
平日ってこうなのか、と思い知らされた。
特に平日が休みだったらしたいことというものもなく、家の近くでランチをなんて野心もない。
帰宅後はやや久々にあちこちの掃除をした。
期待?
自宅に転送されてくる仕事メールは1通もなし。
休日出勤してまでこなす仕事もあるまいと、献血に行ってみた。
タダでかなり詳しい血液検査ができるので気が向くと行っているのだ。
成分献血でヒマがかかるので、近くの本屋で脳の雑学本を購入。
かれこれ1時間ほど安静にしていたため、本も読みきってしまった。
さて帰るかな、と荷物ロッカーを開けてみると、携帯に不在着信履歴。
どうしてこういう間で鳴らすものか、勝手に呆れながら折り返す。
相手「あれ~、今日は会社にいないんだっけ~?」
私「……出ても出なくてもいいですけど」
相手「んじゃ出たら電話して」
……。
これは出社が期待されていますね。
帰宅せず出社。
我ながら半端な夏休みだ。