幸いこのところ切れ目なく仕事が入っているものの、基本は短期の案件ばかりである。
納期まで一週間もらえることはまずない。
来月の予定が埋まっている、などと聞くと羨ましいものだ。
先ほど打診の入った案件が受注と決まれば、めでたくその仲間入りとなる。
長期案件には慣れていないので、3週間で何枚できますかと訊かれると少し考えてしまう。
欲張りたい気持ちもあるが、割り込みを考慮すると処理能力いっぱいまでとはいかない。
割り込みを断ればよいという向きもあろうが、断りがたい場合もあるのだ。
特定の客先からの依頼であると分かっている場合。
ことに訳文を気に入ってくださっていると聞き及んでいると、そこの案件は断れない。
翻訳会社の担当者もあてにしてくれているからこその指名だろう。
断ったところ、他人に回したが芳しくなかった、と戻ってきたこともある。
定期的に業務が発生するなら何も問題ないのだが。
毎年恒例の定期案件と呼べるものはあるが、具体的に何月何日なのかを知ることはできない。
つまり、優先度は高いが、いつ来るか分からないので、事前に時間を確保しがたいのだ。
そういう話が入る余地を見越して、いくら欲しいかと天秤にかける。
いくら、というのは料金に限らない。
まとまった量をこなすことで得られる経験そのものもかなり貴重だ。
尤も、原稿見本の提示なく規模しか伝えられない場合、受注に至る確率は低いのだが。
来ても来なくても困らない条件として、枚数を答えよというお題なのだ。
目先は短期案件が複数あるので、捕らぬ狸にやきもきするには及ばないが。