月餅できるかな 其の壱 準備の準備

日本では何故か中華菓子店をほとんど見かけない。
しかるべき街にしかそもそも存在しないのではないだろうか。
和菓子や洋菓子の専門店なら街を問わず見つかるのに、些か不思議だ。
豚まん以外には手作りの中華菓子を頂いた記憶もない。
自分で作れたらさぞや面白いのではなかろうか、と思い立ったのは去年の秋頃だった。


日本語の身近な情報源にこれといったものが見あたらず、点心の本を何冊か輸入。
開いてびっくり。50品目以上も載っているのに、月餅についての説明が見られなかった。
「チョコ月餅」「アイス月餅」などと言われても、そんなものは月餅ではない。
月餅の型で抜けば月餅だという発想は面白いとして、求めている情報とは全く違う。
当初は特に目指していたわけでもなかったのだが、かくして興味の焦点は月餅に。


「北京唐人美食職業訓練校」編著の『月餅大全』を取り寄せてみた。
手順ごとに写真があって、あまり中国語が読めなくとも分かりやすそうな構成だ。
しかし肝心な原材料の入手で躓く。
「梘水」なる素材がどうやら必須なのだが、「梘水≠碱水」と釘が刺してあるのだ。
日本語版Wikipediaは「かん水(かんすい、鹸水、礆水、鹻水、堿水、梘水、碱水)は、…」なので本件ではあてにならない。
よそでも「碱水ではない梘水」の日本語説明に満足なものはなかった。
仕事の要領で中国語のまま情報を漁ることにする。
中国でも両者をいっしょくたに扱っている記事は多かった。
ともあれ違いを抑え、後者の成分組成まで辿り着く。
結果、「炭酸カリウム15%:炭酸ナトリウム5%:水80%」と判明した。
あとは抜き型と具材の問題なので何なりと代用の方法もあろう。

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