領事館に電話をしてみたら、もう再発行されているから取りに来るようにとのお達し。
授業もそっちのけで朝っぱらからバスを乗り継ぎ受け取りに出かける。
道が異常に混んでいたこともあり、領事館まで二時間以上かかった。
明確でない記憶をあてに当地のバスを途中下車するのは非常にサバイバルである。
日本と違って降車ボタンなどなく「各停」なのだが、地名も聞き取りにくいことこの上ない。
テープが悪いのかスピーカーが弱いのか、知っている単語ですら自信がなくなるほど割れている。
怖いし能率も悪いのだが、一本につき高くても二元なので許すしかない。
タクシーで行っていたら(乗車時間で料金が決まる)とっくに破産していたろう。
その分の差益(?)で時計の電池を交換し、秋冬物の服を一枚だけ買う。
午前中の開館時間に五分ほど間に合わなかったため、暇つぶしに必死だったのだ。
しかも当地の公共機関は一時半から開くところが大半なのに、ここに限って二時から。
一人で行ったこともあり、穴が空くほど暇で仕方なかった。かといって帰る暇はない。
師匠のお使いに行って時計を直してもまだ正午にもならない。服を買ってもまだ。
致し方ないので大通りに引き返し、そこのマクドナルドで昼食を摂ることにした。
フィレオフィッシュのバリューセットが十六元八角(およそ二百七十円)だったが、
飲み物は選択の余地もなくコカコーラ(日本ではLに相当するサイズ)。
このコーラが妙に水臭い(何だか塩素っぽい)感じで妙に不味かった。
綺麗な店内で衛生的に食事ができて、果たしてこれは高いか安いか?
頑張って一時半までねばり、のそのそと領事館に出向いたがまだ五分あった。
門番の武装警官にきっかり待たされる間、しっかり蚊に咬まれる。
何とも言えず恵俊彰そっくりで軍服を着た兄ちゃんだったが、やはり愛想は悪い。
やっと通されて窓口へ行くと、受領書とパスポート本体に署名を求められた。
そろそろと丁寧に書いて差し出すと、何故かしばし待てとの返事。
手に入ったはずのパスポートがみすみす取り上げられてしまった感じ。
名前を呼ぶから座っていろと言われたので、呆然と座って待つこと三十分。
何のことはない、署名の上からラミネート加工をするのに時間がかかっていたのだ。
そう気づいた瞬間、手元の有り難いパスポート様様が妙に安っぽく見えてきた。
しかもそれで払った額は九百四十四元!何なのだこの高さは(泣)。
疲れが倍加してタクシーを拾いたくなったが、その余裕は全くなくなった。
とぼとぼとバスに乗り、帰りついてみれば五時。たいがいな誕生日だった。