割り切れない

懇意にしている翻訳会社から、「ご相談」とついた引き合いが来た。
事情があって依頼者に料金を請求しないので、報酬も安くなるがやってくれるかと。
提示金額は普段そこからもらっている報酬の半分ほどだった。
会社として料金を請求しない事情はそのメール本文にもあったがここでは伏せる。
原稿を一読して、しばし悩んだ。
個人から個人へのごく私的な、しかし深刻な内容の手紙だった。
手書きなのでやや読みにくいことを除けば難易度は低い。
算盤を弾く自分と、義憤にかられる自分と、両者の間で天秤を持っている自分がいる。
このまま引き受けるべきか、条件をこちらから提示するか、断るか。
結局、無料で引き受けることを申し出た。
私は幼少時より偽善が嫌いなので今回も迷ったが、
ここで報酬額を吊り上げられるほど私は商売人ではなかった。
訳文を送付してからも、善人面して恩を着せたかっただけではないかと自分が疑わしい。
後悔はしていないのだが充実感もない。
願わくば二度とこんな目には遭いたくない。
無論、値引きとかいう次元の問題ではなく。

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