語れば長い話

羽田空港ラウンジで朝刊翻訳の後、今日は人と会う用事が2件あった。
1件は古巣の皆さんと昼食。
今や全員ばらばらの部署らしいが、特に違和感なく自分まで昼休み気分。
知らない人名がいくつか出てくるのは昔からなので気にならなかった。
あっという間に1時間ほど過ぎ、皆さんは職場へ。私は次の用事へ向かう。

お相手はついったーで知り合った同業者、かつ、茶舗の常連さんの一人。
だいぶ前から勝手に親近感を抱いていた相手だったので、会って幻滅されないか少し心配だった。
話し始めてすぐ、杞憂だったと気づき安心。
持病を抱えている方とは思えないほど、快活でさっぱりしたお人柄だった。
互いの身の上話を聞きつつ、法人設立の経緯や苦労など貴重な体験談を伺う。
法人化するならまずは固定客ありき、英語(私の場合は中国語?)のホームページを作るだけでも海外から引き合いがある、などなど。
それが「勉強させていただきます」ではなく、友達然と聞けるとは何たる僥倖。
お話の総括とするにはあまりに漠然としていて彼女に申し訳ないなのだが、翻訳実績を含め、全ての経験は無駄にならないのだと改めて納得した。
生プーアル茶黄金桂烏龍茶もさんざん?褒めていただき、有頂天になっていたと思う。
ついったーにすら書けない愚痴や失敗話なども明るく楽しく交換でき、気づけばもう5時。
改札の手前で別れ、品川駅でスーツケースを回収してホテルへ。

チェックインして部屋に入り、メールやついったーの新着情報を追いかけていて驚いた。
仕事が長引きそうなので会えないかも、と話していた法廷通訳の方が「遅くても良ければ」と伝言をくれていたのだ。
ちょうど贅沢なおやつでしばらく空腹の心配がなかったので、返信がてら携帯電話の番号とメールアドレスを連絡する。
しばらくして携帯電話にメールをもらえたので、指定の場所へ移動した。
駅前だし、と軽い気持ちで入った新丸ビルの中華料理店。
存外に高かったのは彼女から見ても同じだったようで、ちょっと肩をすくめ「…すいません」。
それでも酒類を頼まない限り居酒屋でちょっと飲むよりは安くついた。
変わった料理を食べたのはさておき、やはり面白かったのは仕事の苦労話。
裁判資料の一部をちらっと見せてくれた彼女、「これ1枚2000円ってどう思います?」
翻訳会社を通してでも3000円はもらえるべき分量なのに、裁判所から直接受注で2000円とは。
他の法廷通訳さんが1枚2000円で請け負った前例があるので2000円しか支払われないとのこと。
あくまで本業は法廷通訳であり事前資料の翻訳は付随業務、というつもりなのだろうか。
しかもその本業の報酬も、当該案件(=裁判)が完了してからの支払いとのこと。
裁判員制度ができて裁判の期間が長引くようになり、法廷通訳の報酬発生が押されて遅くなる。
自分の調整しうる都合でなく収入が遅くなる、という不条理が少し気の毒にさえ思えた。
通訳の仕事には憧れみたいなものを感じるが、法廷通訳は過分にしんどそうだと苦笑を禁じ得ない。

それにしても、同業者と話をしてみることが、ここまで面白いとは。自分でも驚いた。
仕事の愚痴さえも、暗くならなければ笑い飛ばしてしまえるものだ。
不満は感じずにいられるのが一番だろうが、鬱々と自分の中にため込んでしまうよりは吐き出す機会を作ったほうが健全なのかもしれないと感じた。

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