接待ごっこ

義母が昼食の予約をしてくれているので、まずは母の手土産を運びがてらダンナ実家を訪問。
しばらくお茶など頂きながら、母達の世間話をそっと聞き流す。
ほどよい時間に義母・ダンナ・母・私の四人で会食場所へ数駅移動。
勿体ないほど贅沢な和食コース料理を頂いた。
食事中、私も聞いていなかったような昔の話をいくつか耳にして内心ざわつく。
物心つくかつかないかの頃から私が伯母の世話になっていた背景事情。
両親が共働きだったからとしか聞いておらず、そんなものかと疑問にも思っていなかった。
母方の祖母が入院していたためだったのだという。
それ以上は聞くまでもなく、いろいろな点と線がつながっていった。
まさに、親の心子知らず。


食後は途中駅で義母と別れ、淡路島へ。
ダンナが珍しく宿を手配してくれていたので、一路そちらへ向かう。
高速バスでは母と並んで座り、話しそびれていたこちらの近況を少し伝えた。
「ずっと孤独な仕事じゃないかと心配していたから、友達ができて何よりだよ」
ぐらいしか返事はなかった。
バスが終点に着くまでの間、父と兄の近況を聞く。
いずれとも直接の連絡がないため、母づてに知るしかない。
まあ相変わらずとしか言いようのない状況だったのは、一応いいことなのだろうか。


予約してくれていたのは、温泉大浴場がある大型ホテルの、何故かスイートルームだった。
「ちょっとの追加料金だったから」というセンスは正直こちらにはなかったので驚く。
母には和室部分に寝てもらい、我々はツイン部分に寝ようという話になった。
お陰で、特に暑がりの母が気兼ねなく冷房をつけられるように。
26度は我々にとって十分な涼しさだったが、客観的に考えれば夏日の気温なのだった。
母と連れだって温泉大浴場へ。
いつになく彼女が小さく、年を取ったように見えた。
特にこれといった話をするでもなく、部屋に戻る。
実は移動中に定期案件が一つ入ってしまったのだが、今回はPCを持ち出していなかった。
母がいるところで仕事をすると、悲しませてしまうからと思い、敢えて自宅に置いて出たのだが。
定期案件は私が客先から指名されており、非常に断りづらい。
しかも分量が少ないので、納期も短い。
部屋にはLAN回線が用意されていたので、愛機さえ手元にあればすぐ済む難易度だった。
ダンナが持参したPCを貸してくれたのだが、ちょっと触って違和感のあまり断念。
帰着後に着手しても納期は守れそうだったので、ひとまず後回しにして何気なく過ごす。


夕食は、これまた豪勢な和会席だった。
開始時刻を遅めにしていたのだが、品数の多さに食べきるのがようやっと。
もう少し若かったら、母が箸を付けなかった揚げ物を譲り受けていたかもしれない。
「もう15年前だったら残さず食べられたのかねぇ」が少し耳に痛かった。
そもそも母は小食なほうだったが、さらに…なのだろうか。


食後、一時間ほどして二度目の入浴。
リビングでついているテレビにどうしても苛立ってしまい、MIDを立ち上げてついったーを覗く。
私がテレビ、殊にドラマ嫌いなのは母も承知しているはず、という甘えもあった。
黙っていては不機嫌に見えそうだし、話しかけたら邪魔になりそうで、不必要に気が咎める。
結局いつもこんな感情を抱いてばかりで、まともな気遣いが何もできていない。
一方的に気まずくなってしまったので、一人で再び大浴場へ。
幸い、私が戻って間もなく二人は就寝した。
こちらは眠れそうにもないので、悪戦苦闘しながらも結局ダンナのPCで翻訳作業。
これでは結局、散財しただけで親孝行にはなっていなかったような気がする。

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