息抜き

大型案件が手離れという間で横浜都心部に野暮用ができた。
何のついでもなく出るのも億劫だと思っていたのが昼前。
早めに済ませたいのでやむなく出かけようかというところに友人から声がかかった。
しばらく会っていなかったので二つ返事で川崎まで足を伸ばすことに。


まずはケーキセットなどつつきながら近況を交換。
こちらのごたごたを聞くなり、近隣に引っ越しておいでと言ってくれた。
郊外で子育てに適した環境が籠城仕事に向かないのも無理からぬ話だと。
「田舎に住みすぎなんですよ」
言われてみれば確かにそのとおりだった。
尤も発言の意図は一つではない。
親類縁者も友人知人も近くにいないのはそれ自体がストレスの元ではと言うのだ。
もう少し近所ならこうして誘いやすいのに、と彼女は笑った。
彼女は彼女で遠からぬ類の事情を抱えているらしい。
その実例と実感の効果か、奇妙なほどその話には納得が行った。
「なんならご主人に(説得の)メールしましょうか?」
そこまで考えてくれるとはありがたい話だ。
雑談の流れから、唐突に日帰り温泉へ。
39度台の低張泉が心地よく、だいぶ長湯をしてしまった。
ため込んだ冷えとストレスはかなり流せた気がする。
元々かなり代謝のよい人だった彼女が一緒に長湯とは、相当なことがあったのだろう。
多少は聞いたが、言えないこと言うまでもないことはもっとあったに違いない。
それでも上がる頃には充実感ある表情になっていたので、温泉の偉大さを感じる。
自分も同じような顔をしていたかもしれないし、もっとひどかったかも分からない。
「まあでもこれでだいぶリセットできましたかね」
唱和するように施設を出る頃には日も陰っていた。

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