なんでもない日

花屋と併設のカフェで無添加のスコーン。
瀟洒な家具を並べてメニューは黒板に手書き。
世の女性の夢を形にしたような空間がそこにはあった。
本棚のムックにはさりげなく掲載ページに付箋。


遅からぬ時間に行ったのだが、マフィンは品切れしていた。
すぐ焼く予定もないらしく、よそゆきでもない笑顔で「もうありません」と軽く一言。
マフィンとスコーンのセットは代わりにスコーン2つでもいいと言う。
彼女が店主なのだろう。
自分の裁量で店を切り盛りしているといった厳しさは漂わせていない人だった。
これだけの世界観を整えて形にするのは容易でなかっただろう。
楽しみながら悩みながら作り上げてきた世界で、彼女の現実と日常が続いている。
登記上の事業内容にはないだろうが、夢を見せ続けるのもその仕事のうちだろうか。
思えば自分も一部は似たようなことをしてきた。
何人が夢見る世界かは知らないが、少なくとも自分はわざわざ始めた仕事だ。
「甘い気持ちで入って来ないで」と厭なことばかり書き連ねていたことを反省している。
あるいは転ばぬ先の杖と思ってくれた人もいるかもしれないが。
認識が甘くとも成功する人は成功するのが実力主義の世界。
本人が痛い目に遭ってから気づいても遅くはないことのほうが多いかもしれない。
その流れ弾を恐れてあらかじめ排除しておこうなどと守りに入っていた認識はないが。
むしろもう少し堂々と開き直った方が、後進や通りすがりの人々にもいいのだろうか。
ごく素直なスコーンとストレートの紅茶を頂きつつ。

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