損得勘定

打診された案件の諾否は報酬だけで決められないものだ。
よほどのことでもない限り断らないようにはしているが、その条件は明示できない。
手の内を明かせないというのではなく、一概に決められないからだ。


報酬が少なくとも、内容に興味があればつい引き受けてしまう。
打診してきた翻訳会社や担当者とのつきあい上どうしても断れないものもある。
まずは1件でも請けてみないと相手が分からないという動機で手を出すこともしばしば。
いずれもそれなりの損得勘定なのだが、算盤だけでは弾き出せないのが妙味だ。


小規模、初取引、報酬は最低限。
原稿が短すぎて面白いもつまらないもない。
通常ならば引き受ける理由がないと判断するところだが、今回は請けた。
そうすると何故か他社から手頃な条件の別件が来るから不思議だ。
案件相互に何ら関係がないのに、仕事が仕事を呼んでくる。

冗談はさておき、内容の照会にメールが6往復もするというおまけ付きだった。
正直なところ、報酬はそのメールの読み書き工数相当分ほどもない。
ただ、相手を知る実によい機会になったので実入りはあったと思っている。
誠実かつ慎重で信頼に足る人だった。
ものによって善し悪しは出てくるだろうが、よい第一印象を持てたのはこちらにも幸い。
こちらの第一印象がどうだったのか、は今更なので考えないことにする。

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