わかってくれない

土曜日。
父「バイトは大丈夫か。ちゃんとあるか」
きのう。
会社の人「仕事じゃあないんですよね」
……違う。違いますよ皆さん。
曲がりなりにも私は翻訳者。
やや曲がりすぎてる気もするが。
でも翻訳業はバイトでもなければ趣味でもない。
事業。
……どことなく後ろ暗いのは何故だろうか。

密かなる就農

翻訳には関係ないが、農業体験をパッケージ化できないか画策している。
現場を知らない普通の人が、気軽に土に親しめないか。
田舎者を自認する私でも、実は小学校のヘチマ以来ごぶさたしている。
帰省の折、どうにか簡単に体験できないものかと母に相談。
母は多分かなりの園芸マニアである。
私「2~3ヶ月で完結する作物で手軽なものって何?」
母「そうそうないけど、……そうだねえ」
私「トマトとか、どうかな」
母「じゃ買う?」
そんなこんなで、私自身がプチトマトを育ててみることに。
母は手際よく地元の園芸店で苗を仕入れると、
「水だけで育つように」と何だかものすごいらしい土を調合してくれた。
しっとりした大量の土を抱えての山手線には抵抗があったので、
ひとまず苗のポットだけ連れて帰る。
-プチトマト成長記の詳細は東京トマト日記http://www.pixino.com/cgi-bin/diary/anaguma.cgiに記録する予定。

中身がない外身

ある支社の人からメールをもらった。
タイトル「月次レポートです」
本文「お疲れさまです
よろしくお願い致します」
添付ファイル”yome様.lzh”
大丈夫かこれは。
スパムだったり毒だったりしないか。
そもそも中身は何なのだ。
恐る恐る?解凍してみると、ちゃんと2種類のレポートが入っていた。
抗ウイルスソフトも黙っている。ほっ。
えぇと。何か間違ってないか。
自分の名前に様のついたフォルダが手元に。
せめて”5月月次.lzh”だったらよかったのに。
本社にいながら支社より立場の弱い部署なので
(そうじゃなくても)
文句は言えないのだけれど。

見た目

今年は花粉症の人が青山の街中でも変なマスクをしていた。
無理しても外したほうがいいんじゃないの、なんて話をしつつ昼食から戻った矢先。
泊りがけの研修に行っていた上司と目が合った。
いつもはスーツなのに、半そでの開襟シャツに綿パン。
「あ、カジュアルだ」と指を差しそうになると、いつものおはようと同じ笑顔が心なし照れているように見えた。
ええと。
口には出さなかったけど、パパだ。
とってもパパな空気が彼の周りにはあったぞ。
事実に照らしても間違いではないが、やっぱり違和感。

何を敬ってるの?

某サロンから携帯に電話が入った。
「yome様のご携帯でしょうか?」
「……yomeですけど」
私は携帯ではない。
そういえば昔いた派遣会社は複数の人がもっとすごい言葉を使っていた。
「M様のご携帯でいらっしゃいますか?」
こっちの主語は何だというのだ。
別に携帯って口に出さなければいいのでは。
「M様でいらっしゃいますか?」で問題ないはず。
問題なのは電話の相手が誰かなのであって、電話の所有者が判っても意味はなかろう。
でもなぜか携帯だけは「ご携帯」になる。
職場に電話してきた人が「ご勤務先でいらっしゃいますか?」などと聞いてきたことはない。
携帯って持ち主より偉いの?

開店休業

勤務先では今日も出社日ということになっている。
世間様から見ても暦どおりならば平日。
しかし、と言おうか、案の定、と言うべきか、やはり職場は閑散としている。
前回(土曜日)より多く来ているのは営業部門。
私の近所は……隣の島に1人。
先週分の議事録をつけて発送。
業務交通費の精算申請。
月例処理データの確認と受け渡し。
仕事が終わってしまったが、時計を見るとまだ10時。
……残るべきか帰るべきか実に迷う。

居場所

正午を回ったあたりに電話が鳴る。
昼休み時間にかけてくるなんて急用?
取ってみると、よそに転職したての人だった。
「あと10分ぐらいでそっち着くんだけど、
お昼いっしょに行かない?」
そうか、お昼を食べるんならこの時間だ。
「一人で、ってなんか淋しくってさ」
気持ちは解る。
私も一人で飲食店に入れないクチだ。
電話の主が私の席に現れた。
向かいの人と3人で食べに行くことに。
「やっぱ淋しくなるもんですよね、会社に来てないと」
「淋しくなるから来てるようなもんですよ、俺」
えぇと、複数の人間の見解が一致している模様。
会社は淋しくなったら来る所。
普通の会社員が聞いたらどんな顔するだろうか。
でも、気持ちは解る。
なまじ独立性の高い仕事ばかりしていると、
出勤していなくても業務遂行はできてしまったりする。
でも、いつものようにいつもの顔を見ると落ち着く。
しかも周りがいつもばたばたと多忙だったりすると
何となくその場から運動エネルギーのおこぼれが
もらえてしまうような気になるのも確かだ。

恐ろしく冷静な人々

しゅぼっ!
お昼ごろ、職場の片隅で火柱があがった。
……翻訳企画の三面記事ではない。
東京の某いんてりぢぇんと・びるの今日の出来事である。
正午を回るか否かぐらいのけだるい時間、ふと音のする方向を見ると真っ赤な火柱が。
否、真っ赤というと嘘かも。炎色反応でいうナトリウムの炎があがった。
1秒間ぐらい続いていたように思う。
幸い、何も燃えなかったらしい。ひたすら電線の焼けた臭いだけがしていた。
現場はセキュリティ・ルームと隣の部署の間。
冷蔵庫に電子レンジが載っている。
どちらも明らかに前世紀の遺物、相当な年代ものだ。
いつどちらが火を噴いてもおかしくない風格ではあった。
そのせいなのか、周りがおとなしい。
火元がレンジか冷蔵庫かと噂しあう声は聞こえたが、
会議室に固まるおえらいへの報告は誰もしない。
人事島の人がビル管理室へ連絡をとっただけ。
まるで騒然としないのが傍目に滑稽だった。
見る間に、というよりはゆっくりと、煙が充満。
じわじわと視界が白くなってきたので外食がてら隣の島の女性陣と屋外避難することに。
入った飲食店での会話。
私「火を噴いたのは冷蔵庫でした。足元あたりの柱がすすけてましたから」
隣の人「あれも30年ものぐらいだもんねぇ」
はす向かいの人「パソコンは買い換えるのに……」
隣「でも延焼しなくてよかったよねぇ」
私「してたら洒落になりませんよ、非常口に出られない人どれだけいるか」
はす「えらい人みんな会議中で気づいてませんでしたよね。取り残されちゃうのかも」
隣「みんな気づいてなかったよねぇ」
一同「避難訓練ってやっぱ必要?」
そう、この件で気づいたのだが。
現場は出入り口にほど近く、辺りの人の避難経路にある。
本当にそこで火事になってしまったらかなりの問題だ。
それでも多分、大々的な広報はないと思われる。
冷蔵庫の買い替えが入ればいいほうか。
私の勤務先ときたら、決してけちではないだがだいたいそういうところがアレなのだ。

出勤日……多分

勤務先では今日と29(金)が出勤日となっていた。
が。人がいない。
いつもなら900人ほどいるフロアに、20人ぐらい。5人いる私の周りが賑やかに感じるほどだ。
しかも会話はなく、ひたすらキーを叩く音ばかり。
遠くで電話がけたたましく鳴っている。
部署まるごと無人なので鳴りっ放し。
仕方がないのでとってやろうと腰を上げたが到着前に鳴り止んでしまった。
もしや有給を吐き出させるために出勤日設定?
聞こうにも人事担当のシマさえ無人なのだった。

面接

勤務先で年度初めの目標設定面接があった。
上司からお題目の提示を受け、相談する機会である。
目標を設定する前提として、現状認識を聞かれた。
図らずも長々と愚痴を言ってしまい、悪いことをしたと思う。
それでも苦笑しながら遮らずに聞いてくれて、素敵な上司だ。
何を訴えたかったのかというと、私の存在感のなさである。
今日現在の主務はあるシステムのお守りなのだが、問題発生時の対応以外に私が役に立っているのか疑問だった。
周りは多忙な人ばかりなのに普段すこぶる暇で、精神的な居場所が職場にない。
上司から評価されたのも、やはり問題対応の早さだった。それはそれで付加価値だっただろうとのこと。
本来ならその対応能力は問題対応より前向きに使いたいね、と慰めに近いお言葉をいただいた。←わざと敬語
最後に、話し合った内容を所定の帳票に書くよう指示が出た。
私「じゃ今メモしていただいたとおり入力しますね」
上司「ぃゃその、きれいに文で書いてよ」
上司「……そういや文章うまいよね、本たくさん読んでるでしょ」
私「???」
上司「メールとか見てても、まとめ方がきれいで分かりやすいよ」
私「これでも前職マニュアル編集でしたから」
助かってるとか感謝してるとか言われてもぴんと来ないながら、日本語をほめられるのは、かなり誇らしい。
それが会社にとって価値あるものかはよく分からないが。まぁそういう難しいことは上司がなんとかしてくれると思う。