「ツイてましたね」

原稿を待つこと丸々半日、未明に日程変更の憂き目にあった。
変更後の案件について電話があったのは昼前。
さんざんな目に遭わされたので(とは明言しないが)以降の案件もろとも断る。
何ともやるせない気分を抱えていたところ、携帯が鳴った。
「いろいろと大変だったようで…よかったらお茶でもと思ったのですが」とのメールが。
とても救われたような思いがして、すぐに「嬉しい!」と返信を打った。


車で迎えに来てくれたので、目的地を問うこともなく気軽に乗り込む。
見慣れない景色を過ぎて着いた先は、かなり大きなカフェだった。
一階部分の半分ほどが焙煎工場、残り半分が珈琲豆の販売コーナー。
吹き抜けで焙煎工場を見られるようにした二階部分がカフェとして営業していた。
ミルやらドリッパーやら、本格すぎてついていけなさそうな器具がカウンターに並ぶ。
到着した時点では禁煙席が塞がっていたので、しばらく店内を眺めながら待った。
案内された席は一人掛けソファが向かい合わせになっている贅沢な造り。
一人掛けと言っても、女性なら二人はいけそうな大きさだった。
ふかふかさのあまり半分ほど沈みながら注文伺いを待つ。


かなり前から参加を予定しておきながら、先週の案件がひっかかって出られなかったイベントの話を聞く。
まあおおよそ想像していたとおりだったので、妙な安心感を覚えた。
大規模なイベントは遠くで羨んでおくぐらいが丁度なのかもしれない。
少人数でちんまりやろうという企画もちらほらあるようなので、そちらには誘ってもらえたらと思う。
こうして卓を挟んでまったりと話し込むほうがよほど楽なのだから。


気づいた頃には一時間ほど過ぎており、ぼちぼち帰るべき時刻に。
「このお店に禁煙のソファ席があったなんて、…今日はツイてましたね」
そのツキをくれたのは間違いなくこの人だと思う。
まあそういう人にこういう間で声を掛けてもらえたのが、私のツキだったかもしれないが。
支え助けてくれる人に恵まれ、幸せだと実感した次第。

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