毒抜き

しばらく風邪を引いていたが、体力が回復してきたのでリンパマッサージへ。
健康増進のために体力を消耗というのもどこか矛盾を感じるが、まずは気にしない。
当地でどこがよいのか知識がないため、グルーポンで試してみた。


一軒家をエステのために借り切っているという物件は不思議な趣。
駅からの直線距離は短いのに、道がなくて簡単にはたどり着けなかった。
要は路地が入り組んだ昔からの住宅地である。
色画用紙に手書きの看板が迎えてくれたが、見るからに民家なので呼び鈴を押す。
出てきた人は間違いなく店員なのだが、なんとなくばつが悪かった。


この手のサービスにつきものの問診票めいたものに個人情報を記入して二階へ。
六畳間に施術用ベッドが置いてあるだけの簡素な空間だった。
有線と思しきBGMは邦楽クリスマスソングばかりだが、季節感があって悪くない。
最初の30分は雑誌を与えられつつ「よもぎ蒸し」。
服を全て脱ぎ、貫頭衣ともケープともつかぬ傘のようなものを被った。
眼鏡を外していたので雑誌を読むのも一苦労だったせいか、いまいち寛げず。
蒸されているようだったのだが、最後の5分ぐらいしか汗をかかなかった。
使い捨ての下着に着替えて本命の経絡マッサージを受ける。
それと名乗られたわけではないが、担当してくれたのは店主らしい。
経絡を辿るたび、どこを支配するものであるかを丁寧に説明してくれた。
痛くもなく、真面目に流してくれている感じ。
ただ、こちらに合わせてなのか会話らしい会話は何もなかった。
施術中以外の部位は電気毛布のようなものとラップで包まれ発汗を促される。
塗布される油分の感触もあり、寛ぎや癒しといったものは得られなかった。
ベッドを離れたときに結構な発汗量だったと気づき妙に感心。
アロマオイルでなかったせいか、シャワー室にはボディソープが備え付けられていた。
オイルをすっかり洗い流して服を着たところで応接に通される。
あれやこれや勧められたが何となく断って生姜紅茶だけ飲み干し退店。
自分も不器用なのでどうこう指導してやれないが、商売下手さが惜しい。


揉まれている間に仕事の打診メール。
(何故かこういう私用があるときに限って大きめの案件が入る)
携帯からなので引き受ける旨だけ返信して帰途に就いた。
一刻を争うような納期でもないので、温まったこともあるしと徒歩で帰ることに。
ついでにスーパーでも寄ろうかとした矢先、他社から引き合いの電話。
おかげさまで所謂クリスマスは仕事一色になりそうだ。
連休ぐらい遊ばせてよと泣き笑いの同業者もいるようだが、私は単純に喜んでいる。
やせ我慢でも大げさでもなく、私には仕事が一番のプレゼントだ。
すっきりとリセットできたところで好物の仕度。
それはそれで幸せな冬だ。

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