変わりなく

いつものように所用を済ませ、納品ならぬ課題の提出を終えて西へ。
旅路と言うべきか家路と言うべきかは分からない。
飛行機派なので新幹線駅にはなじみがなく、特に懐かしさは感じなかった。


(義理の)祖母は記憶に違わずクールだった。
特に来訪予定を伝えてもいなかったのだが、遭遇しても驚きすらしない。
「あ、いらっしゃい」と表情も変えずお茶を出してくれた。
冷めないうちに頂きたいところながら、まずは放鳥。
5時間も文字どおり箱詰めだったこまをしばらく飛ばしてから一服した。
誕生日ケーキを調達しがてら、かつて住んでいた街を徒歩で往復。
国道沿いの洋食屋がつけ麺屋になってはいたが、総じて何も変わっていなかった。
ガード下の不条理に安い果物屋も健在。
関東で軒並み品薄になっているりんごが籠盛りで100円、紅ほっぺが230円。
何故ここに自分が存在しないのだろう、と幽霊にでもなったような気分を味わった。
懐かしさとも未練とも違う、感傷的ですらない奇妙な感覚。
ともあれ沈んでいては勿体ないので、予定どおりケーキ屋を覗いた。
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色とりどりの菓子はどれも美味しそうだったが、4号デコレーションに決定。
数字キャンドルを手に取ったのだが、店員さんの勧めによりチョコプレートにした。
帰着してしばらく、家の中を眺める。
他界している方の祖母による木目込人形の雛飾りが微笑んでいた。
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花瓶に生けられた春模様ともども、ゆとりを感じさせる。
自分の記憶と人形の並びが違うのであれこれ調べているうち、義母が帰宅。
今の仕事はパート勤めと言うより嘱託扱いらしい。
そのあたりの話やら近況やら喋っているうち、呆気なく日が暮れた。
間が悪く大きな鯛が手に入らなかったとのことで、レンコ鯛の尾頭付きが食卓に。
梅酒で乾杯した他に特別なことは何もなく、和やかに手料理をつついた。
食後にいざ例のケーキを取り出し、本日の主役と記念撮影。
らしくもなく照れ笑いを忍ばせていた。
それでいいのだと思う。

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