古い歌を聴いていると、電話の使い方で時代を感じることがある。
「ダイヤル回して手を止めた」
平成生まれの子にダイヤルを回すという概念が分かるだろうか?
確か電話のかけ方は学校では習わなかった。
家庭でそれとなく教わって知るものだとしたら、電話の発信は最早ダイヤルではないはずだ。
尤も親世代はダイヤルを知っているだろうとは思うが、伝えうるものだろうか。
「手で覚えてる電話番号」
携帯電話ではメモリに連絡先を記録してしまうので、誰の番号もまるで覚えなくなった。
メモや電話帳、連絡帳などで電話番号を管理することもない。
ましていちいち特定の人の番号を入力することは考えがたい。
「夜更けの電話あなたでしょ」
携帯電話やナンバーディスプレイ対応の固定電話では、こんな風情はない。
あなたでしょ、ではなく、確実にあなたであるか否かが表示されて客観的に判定できる。
電話ひとつかけるにしても、細かな幾多の手続きや障害がある。
こうした風情や気分を、前提を共有しない世代にうまく伝えることは可能だろうか。
古典の授業のようにまとめて説明するのも無粋な気がする。
もののあはれと同列に黒電話が並ぶのも何かおかしい。
おかしいと思うのは、私が昭和の人間だからだろうか。
レコードに触れたことがない私でも「針が下りる瞬間」を理解できるように、
なんだかそういうものなんだろうなと分かるものだろうか。
まだ登場人物が生きている、半端に昔の話。
どこまで断絶なく、説明なく、共有できているのだろうか。
薄皮たい焼 銀のあん
全国?チェーン店。あずき150円也。

「美味しく召し上がれますように」と言いながら渡してくれた。

薄皮と名乗るだけあって、あんが透けて見える。
生地は香ばしく、咬むと本当に音がしていた。

あんはややさらさら。甘さが強かったものの、厭な後味はなし。
井津美屋
和菓子屋が鯛焼きも扱っている体裁の店。つぶあん136円也。

大振りでふかふかな印象。

「和菓子屋さんのあんこたっぷり!」と自慢げに標榜しているが。

絶対量は多いのかもしれないが、相対的にはむしろ少ないほうに入る。
確かに和菓子屋のあんこと言える上品なあんではあったが、生地の勢いに負けていた。
救いは生地がさほど甘くなかったことか。
女子会ごっこ
下戸だけど飲みたい、とつぶやいたら、お相手してくれる人が二人も現れた。
あれよあれよという間に本場の鶴橋で焼肉を堪能することになり、夕刻に待ち合わせ。
二人は初対面だそうなので、勢い私が引き合わせる形になった。
駅前すぐに鯛焼き屋があるので覗き(別項「一輝」)、市場で少し買い物をしてから焼肉屋へ。
三人のうち、まともに飲めるのは一人だけ。
私は最初の一杯だけ葡萄酢のサワーにしたものの、あとは飲まなかった。
盛り合わせ、生肝、塩タン、赤身ロース。
次々と注文しては焼き、箸を延ばしたが、黙々とではないところが女子会たる所以。
他言すると角が立つ内容も一部あったので、話題については記録を避ける。
まあ酒の席の無礼講というほどひどいことも言ってはいないのだが。
派手に盛り上がるということもなく、意外にまったりと食事会の空気だった。
同業つながりとは言え、互いの日常や仕事に接点はない。
だからこそ気楽に食事ができるのかもしれないが。
フリーランスにも勤め人にもそれなりの苦労はあるし、旨みや生きる知恵みたいなものもある。
特にそれをひけらかそうともせず、聞き出そうともせず。
生キャベツと一緒に噛みしめながら、何事も安直に決めつけるものではないなと思った。
一輝
ベビーカステラと鯛焼きを扱っているお店。十勝あずき120円也。
焼き上がりの商品は特に保温するでもなく積んであった。

味というより食感で好き嫌いが分かれるかもしれない、ふかふかの生地。

未検証ながらベビーカステラと同じ生地かもしれないと思った。

あんは砂糖分が強く、ややさらさら。
生地も甘かったのでちょっと救いがない感じだった。
幸福屋
商店街の中でたこ焼きも扱っている。小倉100円也。
よくある大量生産型だが、実は一匹がかなり大きい。

価格と大きさで想像は付いたが、あんは少なめ。
ういろう部長をして「ベーキングパウダーの味がする」と言わせしめた一品。
多くは語るまい。
サザエうす皮たい焼
大丸京都店の地下に立地。小倉140円也。

焼き上がり商品の保管風景が面白い。
重なって湿気るのを防いでいるのだろうか。

注文したら炙り直してくれた。
うす皮の名に恥じず、中のあんがところどころ透けて見える。
生地はほんのり甘く、とてもパリパリしていた。
これだけあんが入っていても生地が湿気た感じがしない。
あんは適度にねっとりしており、水っぽくも粉っぽくもなかった。
生地が甘いだけに、あんがもう少し甘さ控えめでもというのは贅沢か。
亦タ楽シカラズヤ
「心配してたんですよ。どう声をかけたらいいのか分からなかったんですが」
彼女は笑顔だった。
それだけで全ての気苦労が救われた気がする。
同業つながりの友人が東京から出てくるというので、京都で落ち合って川床で会食とあいなった。
曇天のせいか黄砂のせいかすっきりとした景色ではなかったが、意外と快適な鴨川。
どうせなら京都らしく、という話になり、京会席弁当のミニコースをつつく。
冒頭のとおり、時候の挨拶でもなく近況の交換でもない、少々もやっとした話ばかりしていた。
「やっぱり見かけないと心配するし、久々に見つけて安心したんです」
該当者は私だけではない。
しばらく「つぶやき」がなかった仲間内を彼女はそっと心配していた。
だったら直接そう伝えればいいのに、と答えてしまったが、そうもいかないのは承知している。
お互い悪意がないのは前提として共有しているので、それも笑って流せた。
それでちょうどよかったのだと思う。
事前に聞いていた予定はあらかた済んでいるとのことで、些か拍子抜けした。
冗談半分に鯛焼きのハシゴでもしようかと言い出したら、瓢箪から駒で実現することに。
折角の京都なのにそれでいいの?と念を押したが、折角だからそれでいいのだという。
京都観光ガイドブックも持参していたし、観光マップも手元にあるのだが、敢えて。
それも滅多にできることではないねということで、歩いて一軒目に向かった。
(鯛焼きについては別項)
地下街やら店内やらを歩いていて、方向感覚に感心される。
地図を子細に読み込まず、自分の中の座標軸で歩いているのだと答えて更に驚かれた。
言われてみれば確かに、そういう感覚の持ち主は限られているかも知れないが。
地下鉄四条駅と阪急烏丸駅の改札を間違えたりしたので、偉そうなことは言えない。
特に気にすることもなく笑い流し、わざわざ地下鉄を乗り継いで次の鯛焼き屋へ。
ぶつくさ言いながら鯛焼きをかじっていたら、流石「鯛焼き部長」だと笑われた。
「鯛焼き部」の創設者に失笑を買っていては世話はない。
鯛焼き屋は3軒メモしてあったのだが、2軒目のものが重量級だったためハシゴは中座。
二条城に行こうか北野天満宮にしようかと歩きながら相談たが決まらないうち結構な時間に。
ご主人と合流する待ち合わせ時刻が決まっていないと聞き、京都駅へ行っておくことにした。
JR京都駅ビルの、その名も「京都茶寮」で時間調整。
選べる生菓子のうち二つがういろう素材のものだったので、一つずつ注文して半分こした。
「ういろう部長」は「感激~」と言うなりにこにこと黙って即座に完食。
「鯛焼き部長」と違って蘊蓄をたれる趣味はないらしい。
返す返すも自分の言動が恥ずかしくなる。
「いいじゃないですか、愛すべきキャラってことで」
いいんだろうか、その言葉に甘えて(浮かれて)…とりあえず照れている。
永沢寺
三田市の永沢寺(地名はエイタクジ、寺社名はヨウタクジ)に行ってきた。
芝桜が丘を埋め尽くすという「花のじゅうたん」観光が主目的。
三田駅からバス一本と聞いていたので気軽に出かけたところ大失敗。
この連休中は臨時バスが出ているが、今日は平日なので乗り継ぎが必要とのこと。
乗り継ぎがあるまではよかった…が、まさかの待ち時間90分。
ターミナルかと思っていたバス停にはターミナル施設どころか対面の標柱さえもない。
素直に待っていては現地観光の時間がなくなりそうだったので、タクシーを呼んだ。
電話から15分ほどでタクシーが現れ、乗車10分ほどで現地へ。
平日だからなのか、場所柄そうなったのか、見物客はまばらで若い人となると皆無。
犬を連れて入園していた人々が相対的に…といったところだった。
肝心の芝桜はと言うと、ところどころ地面の被覆が見える微妙な密度。
確かに複数の品種があって興味を引きはしたのだが、期待したほどの規模がなかった。
むしろ惹かれたのは岩ツツジ。
道中の山肌に見られたものと同じ青紫も透明感があってよい。
園芸品種なのか、紅が差した花色のものもあった。
「丹波の焼き栗」をおやつに園内のベンチで休憩。
面白い色のムスカリが植えてあった。
帰りのバスまで時間があるということで近接する牡丹園も覗いてみたが、こちらはさっぱり。
例年なら今が見頃のはずなのだが、一部の早咲き品種しか咲いていなかった。
しかもなんとなく貧弱。
期待もせず立ち寄った永沢寺そのものの植栽が一番よかったというのはどういう皮肉か。
曹洞宗で総持寺の次という高い序列の力なのか、敷地内全体の手入れが行き届いている。
百日紅の新芽。
標高が高いためか、八重桜がまだ三分咲きだった。
ちょっと上着の襟を立てたくなる風が吹く中、桜の風情を堪能。
しっかりと深呼吸できたので、よしとする。
匠のこだわりだんご たい吉
店名のとおり、団子屋なのだが鯛焼きも扱っているお店。小倉140円也。

生地は塩気が強く、南部煎餅に近い味わい。

写真が悪いのではなく、本当にこんな最中のような色だった。
購入時もう冷めてしまっていたのだが、存外ぱりぱりしていた。

あんは全体にたっぷり詰まっていた。
甘さは控えめ、食感がややもそもそ気味。
団子屋の小倉あんがこれでいいのか。
