我々ここの留学生にとっては連休中の一日だが、普通の大学生にはただの日曜日である。
いつもと同じように財経の彼女は現れた。が、用があるというので学習開始は四時にずらす。
日本語の上手な彼女には本当に解らないことばかりを聞いているので、所要時間は意外に少ない。
まして今週は授業があったわけでもないので新たな疑問も余り湧いてこなかった。さくっと終わる。
余りに早くお互いの用が済んでしまうと、だいたい雑談をして過ごすのが恒例である。
先週のテストがひどかったの何のと日本語まじりの中国語であれこれ喋ってみる。
冬休みの話題になって、自然と私の帰国日程が出てきた。早いので彼女も唖然。
半年で帰るとは先に言っておいたはずだが、それでも何となくきまりが悪い。
「初めてできた日本人の友達なのに…..」と彼女が言うので、住所を書いてもらった。
手紙ぐらい書こうと元から思ってはいたのだが、連絡先を何故か今まで聞き忘れていたのだ。
彼女は電話番号まで書いてくれたので、私も実家の住所に電話を添えて書いた。
でも電話することなんて多分ないんだろうな…..ただでさえ電話が苦手な私に限って。
そして二人でしんみり。でもオチはちゃんとあった。おとしてしまった(笑)。
「中国語の作文うまくないけど御免ね」「…..あたし日本語できるってば」
例の組織の打ち合せ(?)。ただ飯は四川料理。
例の組織(名前は未確定らしいのでまだ使えない)が某電視台と共同企画をやるらしい。
メーリングリスト上で打ち合せ参加者の公募があったので面白半分それに申し込んでみた。
近所の口コミ情報を我らがメーリングリスト等で取り上げ、更にTV番組にも反映される?
情報媒体としての能力を求められているらしい。説明を聞きがてら昼食会。
四川料理の店に入ってから、私は辛いものが苦手であることを思い出した。
今更ながらぽつりと言って笑われる。でも辛くないものも取ってくれるらしいと聞いて一安心。
まずお茶のサービス。各人の茶碗には予め大葉茶、干し棗、枸杞、銀耳が入っている。
そこにやたら注ぎ口の長いやかん(?)を持ったお兄ちゃん登場。客の後ろから次々と熱湯を注ぐ。
一人に言われて気づいたが、「北の国から」のお兄ちゃんに良く似た人だった。
出るもの一皿に三種類は香辛料が入っている。唐辛子と、山椒と、何だろう?
何となく体にはよさそうなのだが、案の定とてもじゃないが辛くて余り食べられない物ばかり。
明らかに辛くなかったのはスープのほか芋とピーマンの炒めぐらいのものである。
場に七人もいたので喋っていれば別に気まずくもなかったから構わないのだが。
でも結果、苦手だという割には結構たっぷり食べてしまった気がする。
組織の発起人の一人である社会人の方がおごってくれたので値段すら分らなかった。
食後あれやこれやと問題の企画について話が出る。中々みんな乗り気らしいし面白い。
途中どこからかデジタルカメラの話になったと思いきや、その場で記念撮影とあいなった。
私としたことが画面から逃げ損ねる。多分ひどい映りで入ってるんだろな。
どこにも行かず、ひたすら卒論修正。終わってもうた。
今日は予定も約束もないので午前中だらだらと惰眠を貪っていた。我ながらいい御身分だ。
それでも昼食はしっかり摂ったので、午後は流石に何かせねばという気になる。
しかし卒論を書き直す以外とりたててすべきこともない。まぁいいか、ととりかかることにした。
参照画面を見つつ、注や本文を直しては仕様書と見比べてまた書き足す。
ワープロ(ソフト)なるものはこういう時に御利益があるもんなんだなと実感した。
修正も書き足しもほとんど手間が要らない。注の番号に到っては自動で直ってくれてしまう。
あっぱれ、文明の利器!…..だが気づいた時には黄昏時だった。
書き終わって暇になるのもだるいが、一日中うちから離れず過ごしてしまったのもだるい。
何時の間にかくも不健全な学生になってるんだ?私…..。
帰国便を手配する為、一人で街へ。たまにはいいかな。
先日の指示によると私は来月十七日までには帰国しなければいけないことになる。
何となく帰った次の日に提出というのも気が引けるので十六日の便をとることにした。
手持ちの航空券は二十日となっていたが、一年オープンなので無料で日程変更ができる。
問題は、航空会社そのものかその代理店でないと日程変更まで扱ってくれないということだ。
しかも自慢ぢゃないがそんなことはつゆ知らず、調べもせず出て来てしまった。
とりあえず心当りがあるのは公安局に程近い三つ星ホテル「上海大廈」。バスにて向う。
世の中はちゃんと聖誕節前夜の雰囲気らしく、大廈のロビーにも立派な装飾があった。
案内板を見ると航空券の販売業務は二階とある。が、行ってみると中二階というべき位置だった。
中華国際航空の代理業務があるかと尋ねると、愛想のいいおねえちゃん達が出てきた。
帰国便の確認かと聞かれ、十六日に変更したい旨を伝える。と、一人がしゃかしゃか打ち込み出した。
見るに私より若い子ばかりが三人で複雑そうな事務をてきぱきとこなしている。すごいものだ。
便を確認し、印字されて出てきたシールを帰りの切符に貼り付けてできあがり。
ただでやる仕事にも微笑みがついてくるとは、よく教育されたものだ。感心しつつ場を去る。
午後にすべき用事もないことなので、散歩がてら少し足を延ばして友諠商店へ。
絹のハンカチを三枚と、食料品をよく分らないがスーパーの大袋に二つ買い込む。
抱えては歩きがたい量になってしまったのでやむなくタクシーを拾って帰ることに。
それでも仕分けをして見直してみるとまだ足りない気がする。もっぺん行かな。
今日から年末休業。とりあえず徐家匯へ。
例の組織の有志で徐家匯のパソコン屋を見てこようという企画があったので参加した。
我々の足で集められるだけの情報をホームページ上にでも公開して、
のち上海でパソコンを買おうという人が出てきたら参考にしてもらおうというものである。
道路の混雑時を避けて九時過ぎに出発したのだが、それでも一時間ほどかかった。
参加したのは私を含め四人。自称初心者が二人と、そうでないのが二人。
二軒ある電脳城のうち、とりあえず「百脳匯」に入ってみることになった。
初めみんなで固まって歩いていたのだが、店の人に話を聞くとなるとどうも二人で足りそう。
はるばる徐家匯くんだりまで来て暇なのも勿体無いので、私は「初心者」のうち一人を誘った。
隣の「太平洋電脳市場」にも似たような情報はあるはずなので別行動で見ようと思ったのだ。
待ち合せ時間を相談し、二人ずつに別れてまた行動開始。我々は隣の建物に移った。
どうも部品屋ばかりで製品化されたパソコンを置いている店はないようである。
完成品のないところで初心者を云々するのも愚かしいので、めぼしいチラシを集めるだけにした。
どのみち完成品の機能は各部品の組み合わせで決まる。その情報だけでもいいだろう、と。
一回り終えて待ち合わせ場所に行ってみると、他の二人が何やら画面を覗いている。
聞くに、「百脳匯」全体で持っているホームページの紹介があったらしい。
しかもそこには各店の相場情報が…..じゃ今までの苦労(?)は無駄足だった訳?
ともあれ時間が正午を回ったので昼食。近くの美食林なるところに行ってみる。
何を食べようとも思い付かずにいる時バイキング専門店らしきところの広告が目についた。
一人は小食らしいので申し訳なかったが、他三人の同意(だと思う)でそこに決定。
流石に和食はなかったが、西洋風と中華風の料理からデザートまで内容は盛りだくさん。
当たり外れはあったものの、これに妖しいダンスの披露もあって一人四十八元は高いか安いか。
昨日の今日で退学手続。たらい回し。
主任の先生に事情を話し、どうしたらいいか聞いてみることにした。
先生は少し考えた後、事前試験が要るかどうかと尋ねてきた。当然いらんわ。
いいです、と答えると彼女は確かに「学生課にお行き」と言った。
何でも明日から年末休業になるので今日のうち行っておいた方がいいそうである。
果して学生課に行ってみると、先生は電話中の様子。かつ用件を聞いてくる。
いいのかと疑いつつ退学手続をどうすればいいのかと問うや、向って右を指差した。?
受話器を置くなり一言、「教務課で聞きなさい」。あれ?話が違うぞ??
やむなく教務課へ行き、試験は要らないから退学手続をさせてくれと言ってみる。
それじゃあ簡単だとばかり、おねえちゃんは班名だけ聞いて何やら書類を持ってきた。
必要事項を書き込んで出せと言うのでその場で書きだすと、「書いてから持って来い」。
これだから教務課のおねえちゃんはタチ悪いって評判になるんだよ。
書くのは本国での住所、学籍番号、専攻に申請理由ぐらいのものだった。
ちゃっちゃと書いていたら五分とかからなかった。部屋と教務課の往復より短い(怒)。
見せるや、おねえちゃん眼鏡をちょっと動かして一言。「後で学生課ね」。???
遂に出た帰国指示。やっぱり中退になるのか…..。
何だかチェックに時間がかかると思いきや、我が老師@大阪からのメールが届いていた。
やっと卒論の提出期限と口頭試問の日程が決まったとの連絡である。
ついては公式の仕様書に基づいて論文を改訂するようにと重い”おまけ”が付いていたのだ。
年末に書き直しても間に合うので、論文そのものには大して問題ないようだった。
問題は提出の日程。一月十八日、本人が提出…..それまでに帰るようにとのこと。
折りもおり、当学院の期末試験初日である。もうちょっとで結業なのに、退学!
まぁ中間試験がつまらなかっただけ、受けずに帰る口実ができたと思うしかないか。
そして実力テスト。まぁ私なんてこんなもんさ(泣)。
ついに問題のテストの日がやってきた。日本とは違い、朝九時から開始である。
受験票とパスポート(何故か必須)、筆記具以外は持ち込めない。持ち込むとその辺に放られる。
二十分ほど前に受験番号と試験会場の照合を受け、席についてヘッドホンの品質を確かめた。
聴き取り問題はただでさえ最大の難所なので、機材のせいで苦労させられては堪らない。
あれよあれよという間に時間は過ぎてしまい、気がついたら終わっていた。
日本で六月にもらったのが初等C級だから、せめて中等C級ぐらいは欲しいところ。
目標は中等A級だったのだが、はてさてどこまでいったことやら…..。
テスト前日だというのに遠出。いいのか?
実は漢語水平考試があるのは明日の朝からである。でも勉強する気になれない。
実力テストの為に試験勉強をするなんて、そもそも主義に合わないのだ。
それに今週はどうせ頭が働いていないので勉強しようにも何も覚えられそうにない。
いつもの通り学校の勉強と「互相」だけは済ませたが、もう何もしたくなくなった。
テストを受ける人達は当然かまってくれないので、もう受ける必要のない人の所へ遊びに行く。
既に最高レベルのお墨付を国家教育委員会からもらってしまっている人は暇なのである。
遊ぶといってもひたすら喋っているだけなのだが、話題の広い人なので全く退屈しない。
街に行きたいと冗談半分で言うと、意外にもすんなりつきあってくれることになった。
上海書城で篆刻用の石を買いに行きたかったのだが、出不精なせいかずっと機を逸していた。
ついでにその向いの外文書店でタロットがあるかないか探そうという目論見である。
先に外文書店へ行ったが、カードは見当らないようだった。ことのついで参考書を見る。
帰国後の勉強に使うため口語の本とテープを選び、語法の本もおすすめのものとやらを買った。
テストが目前だというのに来年の心配をしているとは我ながら悠長なものである。
書城で石を買うのに時間は余り要らなかった。迷わず安い物だけを見ていたからである。
日本の友達とこっちの友達と両方に一つずつハンコを作ってあげることにした。
帰りの道は予想に反して混んでいた。タクシーより徒歩の方が早いのではというほどの渋滞。
上海では「低速料金」なる料金の加算制度があるので渋滞はことのほか神経に障る。
行きの車代を既に出してもらっているので、帰りの分は私が払った。
しかし肯徳基(けんたっきぃ)についていってまんまと一食おごってもらってしまう。
悪いなぁと思うべきなのか、素直に喜んでいいものか…..。
無題
何もなし。平和に過す。