今年は花粉症の人が青山の街中でも変なマスクをしていた。
無理しても外したほうがいいんじゃないの、なんて話をしつつ昼食から戻った矢先。
泊りがけの研修に行っていた上司と目が合った。
いつもはスーツなのに、半そでの開襟シャツに綿パン。
「あ、カジュアルだ」と指を差しそうになると、いつものおはようと同じ笑顔が心なし照れているように見えた。
ええと。
口には出さなかったけど、パパだ。
とってもパパな空気が彼の周りにはあったぞ。
事実に照らしても間違いではないが、やっぱり違和感。
何を敬ってるの?
某サロンから携帯に電話が入った。
「yome様のご携帯でしょうか?」
「……yomeですけど」
私は携帯ではない。
そういえば昔いた派遣会社は複数の人がもっとすごい言葉を使っていた。
「M様のご携帯でいらっしゃいますか?」
こっちの主語は何だというのだ。
別に携帯って口に出さなければいいのでは。
「M様でいらっしゃいますか?」で問題ないはず。
問題なのは電話の相手が誰かなのであって、電話の所有者が判っても意味はなかろう。
でもなぜか携帯だけは「ご携帯」になる。
職場に電話してきた人が「ご勤務先でいらっしゃいますか?」などと聞いてきたことはない。
携帯って持ち主より偉いの?
開店休業
勤務先では今日も出社日ということになっている。
世間様から見ても暦どおりならば平日。
しかし、と言おうか、案の定、と言うべきか、やはり職場は閑散としている。
前回(土曜日)より多く来ているのは営業部門。
私の近所は……隣の島に1人。
先週分の議事録をつけて発送。
業務交通費の精算申請。
月例処理データの確認と受け渡し。
仕事が終わってしまったが、時計を見るとまだ10時。
……残るべきか帰るべきか実に迷う。
居場所
正午を回ったあたりに電話が鳴る。
昼休み時間にかけてくるなんて急用?
取ってみると、よそに転職したての人だった。
「あと10分ぐらいでそっち着くんだけど、
お昼いっしょに行かない?」
そうか、お昼を食べるんならこの時間だ。
「一人で、ってなんか淋しくってさ」
気持ちは解る。
私も一人で飲食店に入れないクチだ。
電話の主が私の席に現れた。
向かいの人と3人で食べに行くことに。
「やっぱ淋しくなるもんですよね、会社に来てないと」
「淋しくなるから来てるようなもんですよ、俺」
えぇと、複数の人間の見解が一致している模様。
会社は淋しくなったら来る所。
普通の会社員が聞いたらどんな顔するだろうか。
でも、気持ちは解る。
なまじ独立性の高い仕事ばかりしていると、
出勤していなくても業務遂行はできてしまったりする。
でも、いつものようにいつもの顔を見ると落ち着く。
しかも周りがいつもばたばたと多忙だったりすると
何となくその場から運動エネルギーのおこぼれが
もらえてしまうような気になるのも確かだ。
恐ろしく冷静な人々
しゅぼっ!
お昼ごろ、職場の片隅で火柱があがった。
……翻訳企画の三面記事ではない。
東京の某いんてりぢぇんと・びるの今日の出来事である。
正午を回るか否かぐらいのけだるい時間、ふと音のする方向を見ると真っ赤な火柱が。
否、真っ赤というと嘘かも。炎色反応でいうナトリウムの炎があがった。
1秒間ぐらい続いていたように思う。
幸い、何も燃えなかったらしい。ひたすら電線の焼けた臭いだけがしていた。
現場はセキュリティ・ルームと隣の部署の間。
冷蔵庫に電子レンジが載っている。
どちらも明らかに前世紀の遺物、相当な年代ものだ。
いつどちらが火を噴いてもおかしくない風格ではあった。
そのせいなのか、周りがおとなしい。
火元がレンジか冷蔵庫かと噂しあう声は聞こえたが、
会議室に固まるおえらいへの報告は誰もしない。
人事島の人がビル管理室へ連絡をとっただけ。
まるで騒然としないのが傍目に滑稽だった。
見る間に、というよりはゆっくりと、煙が充満。
じわじわと視界が白くなってきたので外食がてら隣の島の女性陣と屋外避難することに。
入った飲食店での会話。
私「火を噴いたのは冷蔵庫でした。足元あたりの柱がすすけてましたから」
隣の人「あれも30年ものぐらいだもんねぇ」
はす向かいの人「パソコンは買い換えるのに……」
隣「でも延焼しなくてよかったよねぇ」
私「してたら洒落になりませんよ、非常口に出られない人どれだけいるか」
はす「えらい人みんな会議中で気づいてませんでしたよね。取り残されちゃうのかも」
隣「みんな気づいてなかったよねぇ」
一同「避難訓練ってやっぱ必要?」
そう、この件で気づいたのだが。
現場は出入り口にほど近く、辺りの人の避難経路にある。
本当にそこで火事になってしまったらかなりの問題だ。
それでも多分、大々的な広報はないと思われる。
冷蔵庫の買い替えが入ればいいほうか。
私の勤務先ときたら、決してけちではないだがだいたいそういうところがアレなのだ。
出勤日……多分
勤務先では今日と29(金)が出勤日となっていた。
が。人がいない。
いつもなら900人ほどいるフロアに、20人ぐらい。5人いる私の周りが賑やかに感じるほどだ。
しかも会話はなく、ひたすらキーを叩く音ばかり。
遠くで電話がけたたましく鳴っている。
部署まるごと無人なので鳴りっ放し。
仕方がないのでとってやろうと腰を上げたが到着前に鳴り止んでしまった。
もしや有給を吐き出させるために出勤日設定?
聞こうにも人事担当のシマさえ無人なのだった。
面接
勤務先で年度初めの目標設定面接があった。
上司からお題目の提示を受け、相談する機会である。
目標を設定する前提として、現状認識を聞かれた。
図らずも長々と愚痴を言ってしまい、悪いことをしたと思う。
それでも苦笑しながら遮らずに聞いてくれて、素敵な上司だ。
何を訴えたかったのかというと、私の存在感のなさである。
今日現在の主務はあるシステムのお守りなのだが、問題発生時の対応以外に私が役に立っているのか疑問だった。
周りは多忙な人ばかりなのに普段すこぶる暇で、精神的な居場所が職場にない。
上司から評価されたのも、やはり問題対応の早さだった。それはそれで付加価値だっただろうとのこと。
本来ならその対応能力は問題対応より前向きに使いたいね、と慰めに近いお言葉をいただいた。←わざと敬語
最後に、話し合った内容を所定の帳票に書くよう指示が出た。
私「じゃ今メモしていただいたとおり入力しますね」
上司「ぃゃその、きれいに文で書いてよ」
上司「……そういや文章うまいよね、本たくさん読んでるでしょ」
私「???」
上司「メールとか見てても、まとめ方がきれいで分かりやすいよ」
私「これでも前職マニュアル編集でしたから」
助かってるとか感謝してるとか言われてもぴんと来ないながら、日本語をほめられるのは、かなり誇らしい。
それが会社にとって価値あるものかはよく分からないが。まぁそういう難しいことは上司がなんとかしてくれると思う。
つゆはらい
私は田舎者なので、人ごみを歩くのが苦痛である。
知らない人の速さで歩くのがどうも下手なようだ。
引っ越して会社が近くなったのをいいことに、最近では徒歩で通勤したりしている。
今日は企みごとがあって早めに出社したかったので朝からJRに挑戦してみたのだが、案の定ホームが遠い。
主流の人々に逆行するのでなかなか進めないのだ。
それでもどうにか改札を通り、最後の難関とも言えるホームの階段へ到着。
降りようにも爪先すら差し込めない己の逆行ぶりに困惑。
仕方がないから一団をやりすごそうかと考えていると、ずずいっと視界に入る黄色くてでっかい背中。
何とも言えない怖さをまとったおっさんが、無理やり私の前に割り込んで階段を突き進んでいるではないか。
小者の私は割り込みなんて許す気になれないのが普通だが、考えること約二秒。
このおっさん、むしろありがたいぞ。
なんかこわいから近づきたくないけど。
おっさんは私より一回り以上でかいので、露払いに丁度いいのだった。
ちょっと優雅な気分で三段ほど後ろをちょこちょこ降りる。
なんて楽ちん。
…..あれ。露払いがつくのって相撲取りじゃなかったっけ。
ということに気づき、軽くへこむ木曜の朝。
メタ言語
目の前にある語彙を訳さず、そこに語られている事象を語れ。
そんなようなことを翻訳学校で学んだ記憶がある。
ある特定の事象(こと・もの)をずばりと言い表すのではなく、
その一歩手前の状態を示す、いわば「言葉の一歩手前」をメタ言語と称していたのだが、
試しにgoogleで「メタ言語」を検索したところ、上位に出てきたのは情報処理用語が多かった。
まあプログラミングも言語の世界と言えば言語の世界だが、なんだか感情的に釈然としない。
同じことを言っているような、そうでもないような、もやもや。
翻訳では新語や造語に出くわしたときの逃げ道?としてメタ言語の発想を考えることがままある。
……と非常に長い前ふりを置いたが。
本日の主役は「サラダ用調味料」。
ダイエット情報のページから健康素材を検索しているうち流れ着いた厚生労働省の記事(注)で、
身体に脂肪がつきにくい、マヨネーズの代用品を指していた。
久々に面白いものを見た気分だ。
そうか、マヨネーズってサラダ用だったんだ。
そのうち「お好み焼き・コナモン用調味料」が認可されるといいな。
ちなみに、無油分のドレッシング代用品たちは得てして「ドレッシングタイプ調味料」だったりする。
日本語っていろいろな方向に逃げられて便利だわ(半べそ)。
(注)その記事の名前はこんなにすごい
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会
新開発食品評価第一調査会調査審議結果
小冊子を持つ女
勤務先のとある社員さんに頼まれ、昼休みに近くの駅まで名刺を届けた。
待ち合わせ時間ぎりぎりまで不覚にものんびり食事していたため暢気な街中をばたばた走った。
幸い特に待たせたわけでもないようだった。
名刺を箱ごと渡すと、引き換えに小冊子の束。
午前中の訪問先に持って行った残りらしい。
「持って来すぎた」というので、一掴み預かって会社へ運ぶことに。
駅で目立つ冊子を受け取って歩き出したせいか、すれ違う人々が「いりません」という顔をする。
や、別に配りませんから。
持って帰るだけですってば。
心配しなくていいから見ないで。
片手には黄色と白の冊子の束。もう片方には地味な小さい手提げ。
やはり配って歩くように見えたのだろうか。
悔しいので足早に移動したが、逆に怪しかっただろうか。
