年明けから日記すら書いていないことに今更気づく。
しかもほぼ唯一の読者と思われる母にはとっくの昔、半月前に指摘されていた。
三ヶ月も何をやっていたのかというと、……実は就職したのだった。
あえて転職といわず就職というのには私なりの事情がある。
昨年後半を自由業として過ごしていたので、いわゆる転職とは様相が違ったのだ。
納期以外に時間を縛られないということの楽さと気軽さは、失って改めて痛感した。
定時があるという、勤め人にはごく当然のことが最初の一ヶ月は負担でならなかった。
遅刻も私用での欠勤もしてはいない。今後もしないだろうとは思うが、楽ではない。
今度の会社は、こんな仕事があったのかと思うようなサービス業。
自身の業務は特に驚くようなことでもない集計(とその帳票設計)なのだが、
事業環境やら業界のお約束やらといった伏線が見えず何かと手探りの面も多い。
王様の耳はロバの耳!と叫ぶべく、旅に出ようかと思いついた。
いかんせん一人旅は心もとないので、母と恩人Rさんを誘う。
ダンナも同行するので計四人の旅団となった。
言いだしっぺが自分なので私が幹事?になり交通機関やら宿やら手配したのだが、
全日空「いっしょにマイル割」を前提に考えていたばかりに、
かなりその都合に振り回されて各人への連絡が二転三転してしまった。
こういうとき参加者がその場にいないと思いのほか大変だと教訓を得たり、
いつ電話をかけていいものか迷いながらおろおろしたり、仕事より大変だったかも。
意外な人の意外な人気
中国大手ポータルサイトSina.comの通販ページで本を見ている。
売られている本の一覧を眺めているといったほうが正しいか。
思うところあって伝記の類を漁っているのだが、518頁にも及ぶらしい。
なんとか150頁ほど目を通して50冊ほど気になる本を探し出した。
その過程で目に入るのが、(どこの)誰の伝記が多いか。
中国の書店なので、中国の偉人が多いのは当然。
かつ現代史の英雄がどうしても多いが、今の社会を作った立役者なのだから分かる。
次に多いのはアメリカの企業家。ビルゲイツが目立って多く、メリンダ夫人まで出ている。
やや意外なのはフォードやエジソンといった古い顔ぶれ。
哲学やら源流やらを重んじるお国柄?
日本の人々はどうかというと。
一番人気が何故か川端康成。次いで松下幸之助翁。
まぁ松下翁は「中国の発展を待って稼がしてもらいまひょ」の人だし好感が持てるのだろう。
そして最も「?」なのが、昭和天皇。
なにぶん商品一覧のページであって中身まで見えないのだが、
題名からすると悪く思われてはいないようだ。
何だかうっすら矛盾のような気持ち悪さを感じる。
脳みそ逆回転
翻訳をしていない人にはぴんと来ないかもしれないが、日本語訳と中国語訳は難易度が全く違う。
私は日本語訳ならプロだと公言できるが、中国語訳には自信がなかったりする。
日本語っていい加減すぎるのよ。
原文が何を意図して書かれたものかを訳文上に表現するのが翻訳業なのだが、
日本語はえてして「アレをナニする」「そのへんはごにょごにょ」が多く意図が読みにくい。
厳密に言うと読めるが書けない(苦笑)
某社のトライアル課題に中国語訳の設問もあったので久々にやってみたが。
いわゆるIT分野のせいもあり、日本語がカタカナだらけで日本語文になっていない。
さりとてカタカナを英語に直せばきれいな文になるかと言うとそうでもないのだ。
かなり何でもカタカナ+サ変動詞さえつければサマになると思ってるだろ、日本人。
それで文意を分かった気になってしまうのが一番の問題なのかもしれないが。
たった一頁で日本語訳三頁分より時間がかかった。
もし間違って中国語訳の引き合いが来ても受けないほうがよさそうだと悟った。
もしかしてスパム?
副業だった頃と同じ受注量では貧しくなってしまうと思い、久々に求人検索。
中国語翻訳者そのものの求人をキーワードに検索すると結果が知れている。
ほとんどが数年前に応募しまくったものと一致してしまうのだ。
そこで今回はアルクのページで中国語を扱っている翻訳会社を探してみた。
思っていたより増えている。
幸いなことに取り扱い言語の受注比率も載っているので、中国語の少ないところは除外。
ホームページに求人要項を出している会社のいくつかに履歴書を送ってみた。
全く同じではないが酷似した文書である。
送信控えの一覧を見ていて気まずくなったので、応募をひとまず中断。
募集に対する応募なのだから迷惑ではないはずだが、なんだかスパムっぽい。
とはいえ履歴は変えようがないし、用件は一緒だし……。
惜しいのかそうでもないのか
税務署に行ってみた。
個人事業主となったからには開業届を出して、青色申告もしたい。
ただ、前の職場から細々と「給与」をもらっているので些か不安だった。
税務署の案内やものの本をひっくり返してもいまいち分からない。
・年度の途中に副業→本業とする場合、開業日はいつか?
・給与所得があっても事業主になれるのか?青色申告はできるのか?
・屋号は必須か?
知っている人から見たらしょうもないことばかりだろうが、これが主な疑問。
恐る恐る担当部署らしきところへ行ってみると、普通の事務所だった。
相談カウンターらしきものはあるが無人。
「御用の方は担当に声をおかけください」と張り紙はあるが、担当って誰?
とりあえず「ごめんくださ~い」とその辺で言ってみる。
振り返った人に用件を聞かれたので、開業届のことだと言うと、席を勧められた。
訪問先は間違っていなかったらしい。
「個人事業の開廃業等届出書」「所得税の青色申告承認申請書」は家で印刷できたので
分からないところ以外は書き込んで持参していた。
なるほど、と言いながら係?の人も向かいに座って書類を眺める。
期待していたよりずっと丁寧で分かりやすい返事をくれた。
・開業日:本来は事業を始めた日だが、私のような場合は会社を辞めた翌日でよい。
・屋号:店舗などを構えていない場合は不要。書類も未記入でよい。
・青色申告:残念ながら間に合わなかった。開業日から2ヶ月以内の申請が必須で、
半月ほど遅かった。給与所得は多少ならあってもよいとのこと。
「不動産所得」「事業所得」「山林所得」のいずれかが十分条件。
去年(今年の確定申告)まで雑所得としていた翻訳業収入は、開業届により事業所得に変更。
・雑所得と事業所得の違い:雑所得は申告書Aを使えるが損益通算はできない。
むぅ。あと半月ばかり早ければ数万円お得だったのか。
今までしり込みしていたツケなので自業自得だとは思う。
更に惜しいことに、開業届の控えをもらわず帰ってきてしまった。
まさかその控えで中小機構の共済に入れると思っていなかったので、うっかり。
新年からちゃんとやることにしようっと。
割り切れない
懇意にしている翻訳会社から、「ご相談」とついた引き合いが来た。
事情があって依頼者に料金を請求しないので、報酬も安くなるがやってくれるかと。
提示金額は普段そこからもらっている報酬の半分ほどだった。
会社として料金を請求しない事情はそのメール本文にもあったがここでは伏せる。
原稿を一読して、しばし悩んだ。
個人から個人へのごく私的な、しかし深刻な内容の手紙だった。
手書きなのでやや読みにくいことを除けば難易度は低い。
算盤を弾く自分と、義憤にかられる自分と、両者の間で天秤を持っている自分がいる。
このまま引き受けるべきか、条件をこちらから提示するか、断るか。
結局、無料で引き受けることを申し出た。
私は幼少時より偽善が嫌いなので今回も迷ったが、
ここで報酬額を吊り上げられるほど私は商売人ではなかった。
訳文を送付してからも、善人面して恩を着せたかっただけではないかと自分が疑わしい。
後悔はしていないのだが充実感もない。
願わくば二度とこんな目には遭いたくない。
無論、値引きとかいう次元の問題ではなく。
営業活動つづき
真昼間に固定電話が鳴った。
出てみると、流暢な英語で先日の社名を名乗るではないか!
おどおどしてしまって返事が出ない。
何しろ私は英語が喋れないのだ。
耳にするのが英語であっても返事は中国語になってしまう。
喋れる外国語はほぼ中国語のみになってしまっている。
よく冗談で「I can speak only Chinese」と自己紹介するが、本当は本当だ。
声の主にこちらのびびりが伝染してしまったらしく、
英語と中国語がちゃんぽんになってきた。
傍から聞いていたらさぞかし面白かっただろうが、無論そんな余裕はなし。
とりあえず一原稿をメールしてくれるというところで話は終わった。
…..会話そのものが苦手なのに電話って更に怖いのね。
営業活動
私の翻訳稼業は基本的に受け身である。
口を開けて仕事が降ってくるのを待っているようなものだ。
多少の危機感を覚えつつはあるものの、急募案件が出ていないときはそんなもの。
唯一しているのが翻訳会社への求人応募。売り込みとも言う。
中文和訳が専門なため日本の会社にしか自分では売り込まないが、
たまにTradosの登録情報を見てメールをくれる海外企業もある。
以前は急募案件のみ応え、「登録翻訳者募集」は無視してきた。
英語で対応するのは疲れるので最低限にしておきたいからだ。
しかもたいていは英文和訳の登録募集なので、採用されても嬉しくない。
#そんなこといつまで言っていられるか自信はないが。
今回もらったメールは登録翻訳者募集の旨なのだが、発信元が上海だった。
募集しているのも中文和訳とのことなので、初めて応募書類を作成することに。
それにしても自己紹介を英語で書くのは何かむずがゆい。
中国の会社だったら中国語で書かせてくれとも思う。
ありったけの経歴を並べては消して、体裁や書式を整えて、気がついたら3時間経過。
履歴書や経歴書の整理をしたことがあってすら3時間もかかっていた。
英語どうこうの問題ではなく、売込みが難しいということだと思う。
ぼーぼーどり
夕飯は何を食べたいかとダンナに訊くと、「ぼーぼーどり」との答え。
私「ぼーぼーどり?……からかってる?」
ダンナ「読み方が思い出せないけど、ぼーぼーどり」
私「棒棒鶏?……どんな食べ物か解ってて言ってる?」
ダンナ「鶏肉ときゅうりの細切りのやつ」
私「合ってるな、それで。でも棒棒鶏って胡麻味噌だよ?」
ダンナ「ごまだったっけ?」
私「……じゃあタレだけドレッシングにする?蒸し鶏サラダ?」
ダンナ「じゃあそれで」
ここで冷やし中華の材料が一式ありながらハムだけないことを思い出す。
半強制的に「蒸し鶏の冷やし中華」で交渉妥結。
JTF翻訳環境研究会
日本翻訳連盟の主催する「JTF翻訳環境研究会」セミナーに初参加。
フリーになったら行ってみたいと以前から思っていた、のに遅刻。
大江戸線の深さは侮れないと改めて反省。
セミナーはほぼ毎月あるのだが、中国関係は年に一回しかない。
午後に打ち合わせする予定だった元上司に無理を言って日をずらしてもらい、
恐る恐る会場に向かった。
講師は中国のみならず世界各地でローカライズ事業を営まれているという。
最近の中国事情を裏表なく丁寧に説明されていた。
そして、「一社で行っても苦労が多いばかり、皆で協力しませんか」とのまとめ。
私以外の聴講者はどうやら翻訳会社の(会社業務で来ている)人々だったようで、
質疑応答も耳に痛いほど切実なものだった。
感想。
中国ではやはり「大きいことはいいことだ」、職人芸より薄利多売の文化らしい。
でも私は一日本人フリー翻訳者である以上、職人になるほかない。
大陸では大意が通って間違いさえなければ翻訳業務は完了とみなされるそうだが、
日本人ことに日本の日本人は違う……その隙間が居場所になりそうな予感。
休憩時間に名刺交換を試みる勇気も出ず、終盤までおどおどしていたが、
公演終了後に複数の方から声を掛けていただき内心ほっとした。
履歴書を見たいという副社長(!)まで現れ、望外の喜び。
早速メールで送りつけてみたが、どうなることやら。