勉強が要るとは言え分かりきったことまで復習するのも気が引けるので、
会話文などの口語表現を重点的に追いかけ、英文と対比して意味を覚える。
重要と思われる文法や目新しい単語(特に動詞・量詞)がある例文を書き写す。
たったそれだけの作業をするだけでも三十課もある教本なので今日までかかった。
何例か書き写しているだけでも文型の法則性が分かってくるのは、今の授業のおかげだろう。
生徒の作った例文に間違いがあるとその場で直してくれる先生がいるのだ。
しかも時によっては「悪くはないが、こうするともっといい」などと助言をくれたりする。
こっちの気分によって有り難かったり鬱陶しかったりする教え方だが、
自習の役にも立つのかと今更になって感心させられた。
余りにも暇なので師匠を誘って蘭生大酒店でお茶する。
午前中はだらだらしながら勉強していたので別に退屈でもなかったが、目が疲れた。
私は体が頑丈な割に目は弱いので、少しでも疲れを覚えたら自習はしないことにしている。
しかし部屋にいても勉強ぐらいしかすることがない。しないとなると暇なのだ。
ともあれ昼食を摂りに出ようとした時ふと見ると師匠の部屋の戸が開いている。
そういえば帰っていたのかと思い出し、土産話を聞きがてら一緒に学食に行った。
聞くに彼女も暇を持て余しているらしい。どう時間を潰したものかという相談になった。
折角このいい天気に出かけないのも勿体無いのでどこかに行きたいのだが、思い付かない。
うだうだ討論(?)した揚げ句、徒歩四十分ほどの距離にある「蘭生」へ行くことにした。
お目当ては先週の金曜に食べたケーキだったりする。ま、運動するからいいか、と。
直射日光を浴びてしまい暑かったが、空気は割に良かったのでいい運動になったと思う。
そして師匠が一つと私が二つケーキを取り、一服して四方山話。
4ツ星ホテルでもタイムサービスなるものはあるらしく、飲み物が三割引だった。
店員さん達も暇そうで、我々も暇で…..妙にのどかな時間を過ごしてしまった。
帰りも暇に任せて徒歩だったのはいいが、流石に出費が懐に来たので夕飯は抜き。
豆乳を一杯と「養生羹」なるお汁粉のようなものを飲んだだけで終わる。これが現実。
再び”裏”取引で両替。ついでに残り期間の予算を立てる。
昨日の帰り、前回いいレートだった店に寄ったが取引を断られた。
往々にしてあることなのだが、多額の人民元が用意できないからである。
今日の十時には店側の資金が調達できると聞いていたので、昼間に行ってみた。
いけるかと尋ねたら「あんまり良くないけど?」との返事。確かに昨日よりは安い。
一旦そこを離れ余所で聞いてみると今度は昨日の公式相場なみに安いではないか!
結局さっさと先の店に戻って「やっぱり換えて」と言ったら通じたが苦笑された。
昨日に較べれば安いのかもしれないが、前回より高値だった。
差益は昨日のタクシー代を軽く上回る。満足満足。
しかも何気なく見ていた夜のニュースでは長銀の国有化が話題になっている。
週末を挟むだけに不透明ではあるが、きっと円安は進むだろう。
一万円が七百元を上回っているうちに残りも換えておくべきだろうか、少し迷う。
やっとこさビザ獲得。早速T/Cを換金する(笑)。
公安からもらった伝票によると、ビザは今日までに発給される予定である。
とはいえ今日は木曜日。授業が午後三時まであり、しかも本学での受講である。
公安は四時半までしかやっていないので、今日中に行くにはタクシーを拾うしかない。
本学からバス停までは宿舎からよりも更に一回り遠いので心もとないのだ。
しかしバスで行けば片道二元以下、タクシーだと軽く十倍は取られる。
パスポートの再発給に大枚を費やしてしまったため、懐はたいがい寒い。
だが悩ましいことに今日は怪しいほどの円高。換金するなら今のような気がする。
T/Cの換金にはパスポートが必要なので、取りに行かなければ円高の御利益はない。
かくして午後の授業中ずっと虚ろに算盤を弾いていたのは言うまでもない。
結果、善は急げ!に決定した。授業終了すぐに本学の正門でタクシーを拾う。
幸い血気盛んな兄ちゃんの運転手で路上かなり飛ばしてくれたが、
どうも意味なく警笛を鳴らす頻度が高い。道端の風景をふと見ると騒音測定器…..。
もしかして上海の路上が無用にやかましいのは遊び半分これを動かす人が多いからなのか?
有り得る。何たってここは中国だ。大人さえエレベーター珍しさに悪戯運転する国…..。
ともあれ伝票と引き換えにパスポートを受け取り、ビザの交付料を払う。
これで晴れてT/Cが換金できる!すぐさまその足で銀行の両替窓口へ向かった。
…..いかんせん公式相場は余りおいしくない。これは”裏”を使うべし!
幸い私のT/Cは円建てなので日本円に換金してもらうこともできる。当然そうした。
そして帰りは急ぐ必要がないので二元のバス(笑)。足どりは軽い。
我に返り、初級中国語の勉強を始める。
このところ何をしていいものか分からないまま日を送ってばかりいたが、
何時の間に私は自主的な勉強から遠ざかってしまっていたんだろう。
予習・復習もすれば宿題も出していたが、それで十分だと感じた訳ではないのに。
新華書店で教材を漁ってみたが、どうもこれといったものが見当たらない。
口語の応用テキストみたいなものがあったので買ってみたが、まだ私には早そうだ。
その間することと言えば…..来てすぐに買った「大衆英語」の本がある。
これの解説部分と本文の対訳を写すだけでも文型を覚える助けにはなるだろう。
幸い内容はNHKの「基礎英悟」程度なので難しくない。その気になれば辞書なしでも読める。
だがここは敢えて辞書に頼りつつ精読に励む。語彙の拡充も重要課題だからだ。
もし何か疑問が湧いてきたら先生なり中国の子なりに聞けばいい。
まずは自分の持っている問題点を見つけないと…..今更もう手後れかしらん?
一日遅れで祝ってもらう。しかも何故か韓国人に。
何故か仲良くなった韓国人が部屋に遊びに来ることは以前からあった。
しかしわざわざ呼び出されたのは今日が初めてである。
夕方いきなり電話で呼び出されて、何事かと思って出ていったら一緒に食事しようと言われた。
別に用事もないのでついて行ったのが、入ったことのない韓国料理店。
高そうだから入ったことがなかったのだが、実際そう高い料理はなかった。
何より参ったのが、同席者どころか店内の客が全て韓国人だったことである。
「気にするな」とは言われても、回りの会話が全く分からないので気分は悪い。
もし日本人の集団に韓国人が一人で紛れ込んだらやっぱりこんな感覚なんだろうか。
多分そうではなかろう。まがりなりにもお互いここの留学生で中国語をやっているのに、
母国語ばかりで話して他民族を無視するなんてことは、少なくとも私はやっていない。
やや不機嫌になりかけて気づいてもらえたのか、しばらくしてから女の子が話し掛けてきた。
発音はまあいいが語彙は私より少ないらしい。聞いてみると下の級だった。
私を連れ込んだ人いわく、みんな余り喋れるほど中国語が達者でないそうである。
それでもちょっと納得いかない。借り猫ないし拉致された気分だった。
でも祝辞の言える子には口々に祝ってもらえたんだし、おごってもらえたんだからいいか。
奇しくも誕生日にパスポート再取得。めっちゃ高い授業料(泣)!
領事館に電話をしてみたら、もう再発行されているから取りに来るようにとのお達し。
授業もそっちのけで朝っぱらからバスを乗り継ぎ受け取りに出かける。
道が異常に混んでいたこともあり、領事館まで二時間以上かかった。
明確でない記憶をあてに当地のバスを途中下車するのは非常にサバイバルである。
日本と違って降車ボタンなどなく「各停」なのだが、地名も聞き取りにくいことこの上ない。
テープが悪いのかスピーカーが弱いのか、知っている単語ですら自信がなくなるほど割れている。
怖いし能率も悪いのだが、一本につき高くても二元なので許すしかない。
タクシーで行っていたら(乗車時間で料金が決まる)とっくに破産していたろう。
その分の差益(?)で時計の電池を交換し、秋冬物の服を一枚だけ買う。
午前中の開館時間に五分ほど間に合わなかったため、暇つぶしに必死だったのだ。
しかも当地の公共機関は一時半から開くところが大半なのに、ここに限って二時から。
一人で行ったこともあり、穴が空くほど暇で仕方なかった。かといって帰る暇はない。
師匠のお使いに行って時計を直してもまだ正午にもならない。服を買ってもまだ。
致し方ないので大通りに引き返し、そこのマクドナルドで昼食を摂ることにした。
フィレオフィッシュのバリューセットが十六元八角(およそ二百七十円)だったが、
飲み物は選択の余地もなくコカコーラ(日本ではLに相当するサイズ)。
このコーラが妙に水臭い(何だか塩素っぽい)感じで妙に不味かった。
綺麗な店内で衛生的に食事ができて、果たしてこれは高いか安いか?
頑張って一時半までねばり、のそのそと領事館に出向いたがまだ五分あった。
門番の武装警官にきっかり待たされる間、しっかり蚊に咬まれる。
何とも言えず恵俊彰そっくりで軍服を着た兄ちゃんだったが、やはり愛想は悪い。
やっと通されて窓口へ行くと、受領書とパスポート本体に署名を求められた。
そろそろと丁寧に書いて差し出すと、何故かしばし待てとの返事。
手に入ったはずのパスポートがみすみす取り上げられてしまった感じ。
名前を呼ぶから座っていろと言われたので、呆然と座って待つこと三十分。
何のことはない、署名の上からラミネート加工をするのに時間がかかっていたのだ。
そう気づいた瞬間、手元の有り難いパスポート様様が妙に安っぽく見えてきた。
しかもそれで払った額は九百四十四元!何なのだこの高さは(泣)。
疲れが倍加してタクシーを拾いたくなったが、その余裕は全くなくなった。
とぼとぼとバスに乗り、帰りついてみれば五時。たいがいな誕生日だった。
何もなし。ただ今週分の予習をしただけ。
流石に書くもののねたが尽きてきた。特に今日は何もしていない。
学院の敷地からものの一歩も出ていないのだから、何もある訳がない。
最近もらった手紙(&メール)によると日本の友達はみんなちゃんと勉強して
今という時間を自分に投資しているらしい。読みつつ焦る。何してんねん、私。
でも中国ではさしあたって中国語の勉強ぐらいしかすることがないのだ。
人文科学も自然科学も結局のところ悔しいほど日本の方が上である。
TVでニュースなりCMなりを見ていると分かる。少し先進的なものとなると合弁企業、
すっきり垢抜けた宣伝や衣装は外資系そのものの商品だったりする。
そう言えば一時期の日本もそんな感じだったのかもしれないが…..。
ただ中国の場合、香港・台湾と本土との「両岸関係」があるだけに事態は複雑らしい。
このところ上海市のおえらから江沢民まで、がんばって「向こう岸」と交流している。
果たして伸びようとしているのか、心が貧しくなってきているのか。
来年の自分も想像できないくせにそんなことが気になってしまう今日この頃。
初めての「互相」でのお勉強。なかなか面白い。
日曜に約束した通り、「互相」の子がやってきた。厳密には十分ほど遅れているが。
中国人の時間(待ち合わせ)感覚は個人の性格によるところが大きいので、責めるには値しない。
ともあれ「ビジネス日本語大全(中国人が日本語を勉強するための本)」を読み始める。
本文は読めば解るし、実用例も暗記すればそれまでという常用句が多い。
だからといって朗読してもらうのも折角の機会なのに勿体無いので少し迷った。
揚げ句、本文中の実用例に対する回答の方法を教えてもらうことにする。
例文には疑問文が多く、仮に内容を覚えて聞き取れるようになっても
答えが出なければ会話は成立しないので勉強する意味も半減してしまう。
そこで「より自然な中国語表現を」とお願いして例を出してもらい、数例メモした。
進めていくうち「これは古い」「違いますよ」などと彼女がコメントしてくれて勉強になる。
やはり本だけでは勉強できないことというのも結構あるものだ。
彼女の日本語の方は授業が今度の土曜からということなので、かなり半端になった。
いきなり「聞き取りのために日本語の口語表現を知りたい」と言われ困惑する。
話していれば自然に出てくるし、言われれば分かることなのだが、難しい。
とりあえず「では」→「じゃ」や「していない」→「してない」などを枚挙する。
そのうち思いあたったらまた教えてあげねば。次回は日曜日。
残り百日を切る。今週の打ち上げ兼ちょっと早めの誕生祝い。
私は残り日数が減ったところで別に嬉しくないのだが、師匠は違うのだ。
逆算する日めくりをつくって帰国の日を心待ちにしているぐらい日本シック。
そんな彼女のための「百日祭」と私の誕生日&旅券再発行祝い(泣)を兼ねて、
今週の打ち上げを贅沢にも遠出して挙行することにした。
まずは友諠商店でお買い物。師匠はお父さんの誕生日プレゼントとやらで高い買い物。
七宝焼きの虫眼鏡とペン立て、そして花文字の飾りを購入。私は見立てただけ(笑)。
この花文字というのが面白い。遠目に見ると文字で、近くで見ると吉祥文様に見える。
「家内安全」などの定形句のほか、名前などの好きな文字も書いてもらえる。
彩色と墨があって、どちらも一文字につき五十元。墨の方が文字としては見やすい。
漢字は部首ごとに使う文様が決まっているらしいので落ち着いた仕上がりになるが、
欧米圏のお客のためか無理矢理アルファベット文字も用意してあるらしい。見本があった。
したたかさに感心するやら、呆れるやら…..帰りには一つ作ってもらおうっと。
友誼スーパーでは私もお菓子だけ少し買った。クッキーとケーキと何故かお汁粉。
百合(球根部分だと思う)と緑豆の即席お汁粉なんて近所では見掛けられないのでつい。
中国では水道水が飲めず沸騰してからしか使えないので、お湯で溶く飲料が多い。
お汁粉やコーヒーは無論、粉乳(牛乳と豆乳あり)からオレンジジュース(??)まである。
しかも冬はだいぶ冷えるそうなので、暖かい飲料の備えは意外にも肝心なのだ。
買い物の後、某4ツ星ホテルで贅沢にディナー…..のはずが、裏切られた。
何と料亭が結婚式で貸し切りにされていて入れなかったのである。
師匠もこんなのは初めてらしく、不満を抱きながら階下の食堂部で夕食を摂る。
予定より安くついたのと量が余りなかったのとで、懐にも胃にも余裕ができた。
そこで「折角なんだし」とばかり、ロビーの喫茶部でケーキとジュースをとる。
皮肉にも、そこのサービスで出されたピザの方が食堂の炒め物より美味しかった。
ま、ケーキが美味しかったから許すとするか(苦笑)。